001 動かない、動けない、どうしようもない

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う、うぅ。

体が動かない。まったく動かない。目も開かない。

なんだこれ? 金縛りか?
金縛りの時には、頭だけ起きていて、身体は寝ているから、こういう状態になるって聞いたことあるけど。

うー、起きろ。
起きるんだ、自分!

しばらく、起きよう起きようとがんばってみたが、何も変わらない。

めっちゃ焦るんだけど、なんなんだ、これ!?

さらに怖いのが、周りに人がいるのか、何かが動いているような気配がする。
気配はしても、目が開かないから何がどうなっているのかわからない。

うー、うー、どうすりゃいいんだ。

焦りがつのっていくからか、呼吸も速くなっ・・・・・・。

ん!?

呼吸もできていないんじゃないか、これ!?
まずい、呼吸ができないと死ぬんじゃないのか!?

フッフッ、ハー! フッフッ、ハー!
くそ、呼吸ができている気がしない!
やばい、これはマジでやばい!!

私の焦りとは、関係なく、残酷にも時間は過ぎていく。
どのくらいの時間が経ったのかはわからない。
ただ、十分以上は経っているだろう。

さすがに五分をすぎた頃には、焦りすぎて逆に冷静になった。
五分も呼吸ができていなかったら、さすがに私は死んでいるぞ。
でも、思考はまったく鈍らない。むしろ、冴えてきている気がする。

いや、冴えてきているというのは言い過ぎた。
普段と変わりません。

ここは、落ち着いて、状況を整理しよう。

ひとつ、体は動かない。
というか、身体の感覚がない。

ふたつ、身体の感覚がないからか、呼吸もできてない気がする。

みっつ、意識ははっきりしている。

・・・・・・なんだ、この状態は。
目も見えないし、体の自由がきかないこの状態は不安がつのる。
このままだと、私は精神が壊れてしまうのではないだろうか?

なんで、こんなことになっているのだろう。

私は何をしていた?
思い出せ。思い出すんだ。それがきっとこの状況を切り開く鍵になるはずだ!

私は朝、通勤のため駅のホームにいた。
電車が入ってくるところで、顔色の悪いおばさんが右手前にいることに気づいた。おばさんはそのまま電車に向かっていく。えっ? って思うのと同時に、ついおばさんに手を伸ばして引き留めようとした。

そして、気づいたら今のこの状態。

つまり、どういうこと?
もしかして、私は死んでいるのか。
それとも、植物人間状態なのか。
植物人間状態だと耳も聞こえないのか。

そんな風に考えれば、つじつまが合うのではないだろうか。
体も動かず、呼吸もしていない。この状況でパニックにならない自分自身にちょっと引く。
これはあれかな、株をやっていたおかげか?
ちょっとやそっとの事では、あまり物事に動じなくなったのだよね。

いや、いまはそんな事を考えている場合ではない!

死んでいるにしても、植物人間状態だとしても、私自身には、この状況をどうしようもないことに変わりがない。
この後どうすればいいんだろう。思考はできるが動けない。天使か死神でも来て、あの世に案内をしてくれるのか? それともそのうち眠るように意識が消えてしまうのか?

まさか、このままって訳じゃないよね?

ただ一つ言えることは、今、レンタルDVDを借りていないことだけが唯一の救いだ。

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