002 目覚めるとき

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あれから結構な時間が経ったような気がする。
最初にあった周りで動いているような気配が無くなった。

それでも私は、あいかわらず動けない。
思考はできる。

できるからこそ困ってる。
死んだせいなのか、植物状態だからなのか、まったく眠くない。
こんな状態になる前は寝ることが出来ていたけど、今は全く眠くない。
羊を3000匹数えたところで眠ることはあきらめた。

さて、どうしよう。

◇ ◇ ◇

おっ、また周りで何かが動いているような気配がする。

あれ、身体の感覚がないはずなのに、なんで、気配を感じることができるのだろう?

まさか、私は何かの力に目覚めているのか!?
私は、もっと注意深く周りの気配を感じ取れるように精神を集中させていく。

しかし、何も変わった気がしない。気配もなくなった。
力に目覚めているというのは錯覚だったのだろう。

力よりも、肉体的に目覚めて欲しいよね。

あぁ、どうしたらいいのだろう。

◇ ◇ ◇

あれから何度も気配を感じたり、感じなくなったりを繰り返したが、私は何も変わらなかった。

思考することはできる。
が、それだけだ。なんだ、これ。はっきり言ってどうしようもない。

あまりにも暇なので心を一点に統一するような感じで瞑想っぽいことをすることにしている。
瞑想ごっこだ。

このまま過ごせば悟りでも開けるのではなかろうか。

◇ ◇ ◇

とうとう気配を感じることがなくなった。

瞑想ごっこも特に進展はない。それ以外に何もすることがない。
狂うこともできない。

この頃になると、うっすらと私は死んでいるのだろうなと思うようになった。
だからこそ、死んでいるから死ぬことも出来ないんだろうなと漠然と思っている。

不思議なことに、それ以上の感情はわいてこなかった。

◇ ◇ ◇

あれからどのくらいの時間が経ったのかわからない。

私はひたすら瞑想ごっこをしていた。
いや、瞑想ごっことはすでに言えまい。

私は瞑想マスターといっても過言ではないほどに、瞑想をひたすらしているのだ。
自分自身を無に近づける。世界は私、私は世界、今の私は宇宙のすべて感じ取れる、・・・・・・気がする。

私は、ひたすら瞑想を続ける。
私は限りなく始まりと終わりに近づけた、・・・・・・気がする。

まぁ、結局は、気がするだけ。
そんな簡単に変わりません。

どこまでいっても、私は私だ。

{称号【悟りしモノ】を得ました。称号【動じぬ心】は【悟りしモノ】に統合されました}
{称号【悟りしモノ】を得たことにより、スキル【覚醒】を得ました}
{スキル【覚醒】により、起動が可能になりました}

!!?

ふぁ!!?
めっちゃびっくりするんですけど、えっ、何?

急に声が聞こえたよ。なんというか頭の中に直接響いてくる。
というか、頭の中にイメージが流れ込んでくる?

称号?
スキル?
【悟りしモノ】?
【覚醒】?

動じぬ心とか聞こえたけど、今、めっちゃ動じてる。
動じてるんだけど、大丈夫なの?

いや、それよりも起動が可能って。
もしかして・・・・・・、もしかしてだけど、動けるようになったとか?
まさかね?

・・・・・・目を開いてみるか。

だめだ、目は開かない。まぶたが開く感じがしない。
やっぱり変わらないかと思った瞬間、さらに頭の中に声とイメージが流れ込んでくる。

{ログ:メタルゴーレムが起動しました}

ログって何だ? と疑問に思った瞬間、突如、目の前の景色が開けた。
突然の光だったが、私は思わず目を細めることもなく、普通に周囲を見ることができた。

見知らぬ部屋を見ながら、私は感激に打ち震える。

うぅ、うれしい!!!

テンション上がるわ! こんちくしょう!
私は、大声で叫んだつもりだが声が出ない。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}

また変な声とイメージが頭に流れ込んできた。
そして、私のテンションがいっぺんに下がった。
先ほどの感激が嘘のように鎮まり、いつもの冷静な私に戻った。

どうやら私は立った状態のようだ。
足を前に踏み出そうとして、大きく顔からこけた。

◇ ◇ ◇

まずは状況の確認だ。

私は顔からこけても痛みをまったく感じなかった。
というよりも、私は無事で、床の方が物理的に破損した。

自分の体を見てみると、きれいな銀色のメタルボディだ。
ピカピカだ。動けるのかと思い、両手を目の前に上げてみる。

おぉ、思った通りに動く!

手には指が5本あるが、どうみても人間の手じゃない。ロボットみたいな手だ。

私は立ち上がり、足を一歩踏み出す。
ガシャンと音がするのかと思ったが、静かなものだ。
けっこうなめらかに動くじゃないか。

ただこの体は小さい。目の前の机より頭1個分くらい高いだけだ。

ふむふむ、どうやら、このメタルなロボットが私の体のようだ。

◇ ◇ ◇

自分の身体に少しばかり驚きながら、私は周囲をゆっくりと見る。
この部屋はなんか研究所みたいな雰囲気だ。

いろんな工具っぽいものに、変な配管や魔法陣がある。魔法陣ってなんじゃそりゃ。
あれ、明かりもない暗闇の中なのに、なんで私はきちんと見ることができているのだろう。

動く気配を感じなくなってかなりの時間が経っていたから、埃まみれかと思ったけど、この部屋の中は思ったよりきれいだ。埃なんてちっともない。なんか特別な力でも働いているのか。

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