004 名前

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自分自身のステータスが確認できたので、次は部屋の中を調べてみることにしよう。

その前に社会人でもなくなったし、そもそも人でもなくなったのだから、一人称を「私」のままにしておくのもなんだな。

ここはこのメタルボディに合う雰囲気を出すためにも変えるべきだろう。

「ぼく」だと少しおとなしい。
「私」は今と変わらない。
「俺」もどうなんだろう。ちょっと威厳が足りない気がする。
「わい」だと関西のイメージが強い。
「我輩」は4文字でちょっと長い。

ふむ、いざ、変えてみようと思うとなかなか決まらないな。
どうしよう。そうだ、これからの一人称は「我」にしよう!

名乗りを上げる時も私よりも、我と言う方がかっこいいぜ!

「私はゴーレムだ!」より、「我はゴーレムなり!」と名乗った方が雰囲気がある。
きっと相手だってびっくりするだろう。まぁ、私はしゃべれないんだけど。

はっ、使い慣れた私を使ってしまった。

危ない、危ない。我。一人称は我。

「我はゴーレムなり!」だよ!

{ログ:名前が設定されました}

我が一人称について考えを巡らせていると、突然頭の中に声とイメージが流れてきた。

えっ? 名前が設定されたって、どういうこと?

さっきから頭に響くこの声とイメージはなんなんだろう。ステータスの表示にもなかったしよくわからない。そもそも何かが起こる度にこの声やイメージが流れ込んでくるのはめんどくさいぞ。オフ設定はどこだ。

ーー10分後

わからない。
わからないよ。

オフ設定もなにもこの声自体がわからないのに、オフになんてできるわけない。

それにしても、さっきの声が気になることを言っていた。
「名前が設定されました」だと……。

はっはっは、まさかね。
そんなことはあるわけないだろう。
「我はゴーレムなり!」と思ったから、名前がゴーレムに設定されるなんてあるわけがない!
そんな間抜けな名前の設定があってたまるものか。

でも、ね、念のためにステータスを見ておこうかな。
我は焦る心を抑えつつ、ステータスを開いた。

ーー
名前 ゴーレム
種族 メタルゴーレム
Lv 1 
ステータス 
最大HP:578
最大MP:551
攻撃力:255(+0)
防御力:255(+0)
素早さ:213
頭 脳:209
運  :255

スキル<特技、魔法、耐性>
【ステータス固定】
【復元】
【覚醒】
称号
【変わらぬモノ】
【悟りしモノ】
ーー

お、おぅ。
名前がゴーレムになっている。

なんてこった。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、抑鬱状態が活性化しました}

まさか、本当に設定されているとは。
名前がゴーレムってどうなんだ。

はっ!?
あんなあっさり名前が設定されると言うことは、変更するのも簡単なのではなかろうか。
きっと、さっきと同じ台詞で名前を考えれば、名前の変更ができるんじゃないかな。

おし、そうと決まれば実行あるのみ。

「我はトンヌラだ!」
「我はトンヌラなり!」
「我はトンヌラ!」
「我はトンヌラだぞ!」

これでどうだ!
ステータス!

ーー
名前 ゴーレム
種族 メタルゴーレム
Lv 1 
ステータス 
最大HP:578
最大MP:551
攻撃力:255(+0)
防御力:255(+0)
素早さ:213
頭 脳:209
運  :255

スキル<特技、魔法、耐性>
【ステータス固定】
【復元】
【覚醒】
称号
【変わらぬモノ】
【悟りしモノ】
ーー

お、おぅ。
変わっていない。なんてこった。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、抑鬱状態が活性化しました}

さて、もう変えられないというのであれば、これについてこれ以上考えても無駄だろう。
今やるべきことは周りの状況の確認だった。

部屋の中を調べることにしようではないか。

◇ ◇ ◇

結論から言おう。
調べてもよくわからなかった!

明かりのない暗い部屋でも普通に周囲が見えるのはメタルゴーレムの特性だろうか。

ゴーレムだから目玉があるわけじゃないし、どうやって周りを見ているんだろう。
考えても仕方ないことは、考えないでおこう。

ちなみによくわからなかったといっても、推測は出来る。
我もそこまでバカではない。

この部屋では多分、ゴーレムを開発していたのだと思う。我の他にも2体ほどゴーレムがあったし、ゴーレムの腕や足といったパーツがいくつもあった。書いている文字は分からなかったけど、図面みたいなものもあったしね。

本や紙の資料、魔法陣を描いた羊皮紙もこの部屋には多数あった。紙や鉄の工具、配管などがあるところを見ると、この世界の文明も進んでいるのかもしれない。それとも魔法のおかげだろうか。

本などに書かれている文字はまったく見たことがない。今思えば不思議なことだが、ステータスのイメージは日本語だったから問題なく読めていたんだな。ステータスはなんとも親切な設計だ。

一応、全部の本をパラパラとめくって調べてみたけど、アルファベットが書かれている本なんて1冊もないし、数字もない。ヘソクリのお札が挟まれていると言うこともなかった。

ここはほぼ間違いなく、地球じゃないだろう。
これで地球だったら驚くよ。

この考えは、物語でよくあるフラグってやつにならないかな。うん、ならないだろうな。

この調査の中でステータスはあくまでも自分の情報を表示させるだけということもわかった。本や工具を手にとって、それらのステータスが見えないかなと淡い期待をして唱えてみたが表示されるのは自分のステータスのみ。

自分のステータスが10回ほど表示されたところで、ステータスを唱えるのはやめた。

◇ ◇ ◇

この部屋にある本やゴーレムの材料を持って外に行きたいが、持ち運ぶための道具もスキルもない。異世界の定番のアイテムボックスはないのだろうか。

念のために確認だけはしておこう。

アイテムボックス!

{ログ:アイテムボックスというスキルはありません}

やっぱりだめか。でも、鑑定とはちがい、スキルはありませんと聞こえた。鑑定というスキルはあるが、アイテムボックスというスキルはないってことか。

あきらめるしかないのかな。2体あるゴーレムは、黒い金属で出来ているものが1つ、灰色の岩でできているものが1つだった。重そうだなと思いつつ、それぞれ持ち上げてみる。思ったよりも軽々と持ち上げることができた。

これは我のステータスが高い可能性がある!
ふっふっふ。ちょっとうれしい。

あっ、そうだ。
ゴーレム同士、合体ってできたりするのかな。やってみるか。

黒い金属のゴーレムが変形するかもしれない。
挑戦することは大事だ。

我は黒い金属のゴーレムに手を触れる。

合体!

・・・・・・何もおこらなかった。

こうなるんじゃないかと思っていたけど、実際になってみると悲しい。
あれ、我が悲しんでいるのに、ログが聞こえなかった。あの声が聞こえる基準は何かあるのだろうか。

ここでの調査で、我ができることは全部やった。
そろそろ外の世界に旅立とう。

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