038 学園生活

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我はゴーレムなり。

とうとうこの日がやってきた。晴れの入学式だ。ほぼすべての在校生と教師たちが講堂の中にすでに集まっている。音楽が鳴り響く中、新入生はみんな正装をして堂々と中へと入っていく。我もその最後尾に続く。

大抵の場合、心にやましいことがあるから、びくびくしたり、おどおどしたりして、あいつ怪しいなといらぬ注意をひいてしまうのだ。我は【姿隠し】も使っているし、大丈夫だろという8割の自信を持って、堂々と一緒に講堂へと入っていくことにしたのだ。

ばれたら、謝ろう・・・・・・。ちゃんと謝ろう!

長くて白い髭の生えた学園長が挨拶を始めた。
「新入生の諸君。ようこそ、わがラックスラクイン学園へ」

こういう学園長の挨拶は長いのが常で、特に聞く必要もないと思い、我は周囲を観察する。うむ、我の姿をとがめてくる者はいない。やはり、我の姿が見える者はほとんどいないようだ。

在校生代表や新入生代表が挨拶をしたり、バッチが渡されたりといろいろと入学式が進んでいく。正直長いので早く終わって欲しい。他の新入生にはイスが用意されているけど、我は一人だけ立っている。疲れないけど、退屈なのだ。

ふー、ようやく終わった。新入生はこのまま各自のクラスに向かうらしい。もちろん我も一緒についていく。どのクラスについて行こうかと迷っていたところ、昨日の縦ロールのドリルヘアーのお嬢様を見つけた。知り合いがいた方が心強いなと考え、お嬢様について行くことにした。

お嬢様は端の方にある立派な教室に入っていった。

セレブクラスだろうか、もしくは成績優秀者クラスだろうか、どちらかはよくわからないが、ちょっと特別感があふれる教室だ。みんな席に座っていく。当然我の席はない。仕方ないので、一番後ろにある我と同じくらいの高さ1メートルほどの棚の上に腰掛けてホームルームが始まるのを待つことにした。

なんかお嬢様が我を見つめてきている気がするな。もしかしたら、見えているのだろうか。でも、昨日は何もいわれなかったしな。とりあえず、右手を振ってみる。だが、お嬢様は振り返してくれなかった。やっぱり、見えてないんだろう。

先生が来た。男の先生だ。まるで体育教師だ。魔法使いの女教師だったらよかったのに。いや、今ならまだ他のクラスに移ればいいじゃないか! 我はこっそりと教室を抜け出し、他のクラスへと行ってみることにした。

クラスは全部で10クラスあった。1クラス50人。合計500人。たいしたものだ。実にたいしたものだ。学園都市と呼ばれるのも納得である。学園は5年間で卒業できるようにカリキュラムが組まれているそうなので、500人×5年で2500人もいるのか。すごい多いな。驚きだ。

我は結局最初のクラスに戻ってきた。他のクラスの教師も、魔法使いのおじいさんや、おばあさん、おっさんにおばさんで、特にこの先生に教わりたいって人がいなかったのだ。それなら、やっぱりお嬢様と一緒に学園生活を送っておこうと初心に戻ったわけである。

今日は簡単な説明だけでこれで解散らしい。明日からが楽しみだな。

 

 

ーー体力測定の日

今日は体力測定の日だ。地球にいた頃のように、100メートル走のタイムを計ったり、1500メートル走をしたり、懸垂をしたり、腕立て、腹筋、反復横跳び、綱上がり、走り幅跳び、ボール投げ、握力測定、背筋力といった一通りの測定をやるようだ。

我も一通り参加してみたけど、腹筋と背筋だけはいまいちだった。我ってば身体が硬いから、身体を曲げたり、そらせたりするのはちょっと苦手なんだよね。

だけど、反復横跳びとか、すごい勢いでやったから、ちょっとした旋風を巻き起こした。ゴーレム旋風が吹き荒れましたとかのイメージとしての旋風じゃないよ。物理的に旋風が発生したのだ! さすがは我。しかし、我は空気が読めるゴーレムである。我は残念ながら棄権した。邪魔になってはダメなのだ。

100メートル走はクラスの全員と勝負してすべて我の勝利だった。よーい、ドンでゴールを目指し、一着でゴールを駆け抜けたら、すぐにスタートに戻るというのを10回繰り返した。我の敵はいなかった。もっと鍛えねばだめだな、少年少女達よ。

もしかするとやっぱりお嬢様には我の姿が見えているのかもしれない。100メートル走の時なんて、何してるのコイツみたいな蔑む目で見てきた気がする。お嬢様は顔がきついから、蔑む目で見つめられるとちょっとドキドキするね! わ、我は別にMじゃないから! いたってノーマルだから、そこだけは間違えないでもらいたい!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}

 

 

ーー遠足の日

遠足にも行った。近くの森まで新入生と5年生で簡単な魔物狩りを経験するためにキャンプに行ったのだ。男子も女子もみんながんばっていた。

トイレとかどうするのだろうと心配していたら、何人かの先生が土魔法でトイレを作っていた。キャンプじゃないの? それでいいの? って思ったけど仕方ないね。1000人もいるし、思春期の少年少女だ。そこは必要なケアだったのだろう。

我も魔物狩りにこっそりとついて回ったけど、危ないことはなかったね。弱い敵しかいなかった。夜中に一度大きな黒い虎がキャンプ場に近づいてきたから、『あっちに行きな、人間達がいるから危ないぜ』と追い払っておいた。動物愛護精神にあふれた行動だった。

 

 

ーーリア充

学園だからリア充も当然いる。

なんか王子様と位の低い貴族の娘がいちゃいちゃしている。なんと、王子様は縦ロールのドリルヘアーのお嬢様の婚約者なんだって。学園内でちょっと噂になっていたから、我の耳にもすぐ届いたよ。お嬢様はあんまり気にしていないみたいだけど、婚約者がいるのに他の女といちゃいちゃする王子はどうなんだろうと首をかしげた。

我に念動力がなかったことをこの時ほど感謝したことはない。人目もはばからずにいちゃいちゃする2人に『リア充爆発しろ』と思ってしまったからな。危なかった。本当に爆発したら、大惨事だった。

 

 

ーーいじめ

人が集まるといじめが起こるのはしかたがないのかもしれない。
しかし先生が放置しても我はこっそりとサポートするぜ!

ある日の放課後、校舎内をぶらぶらしていると、王子様といちゃいちゃしてたあの貴族の娘、長いからイチャコと呼ぶことにしよう。イチャコがなんか教室に残って一生懸命机に落書きしたり、その机の中にあった辞書や教科書を破いたりしていたのだ。あんなに見た目はかわいいのに、裏ではこんな陰湿ないじめをするとは。

イチャコは一通り、汚したり破いたりし終わると満足したかのように教室を出て行った。我は念のため、後を付け下駄箱の様子も観察する。我の予想は正しかった。イチャコは下駄箱でもあたりを見回すと、せっせと下駄箱自体を汚したりしている。そのまま満足したかのように帰って行った。

でも、イチャコの下駄箱はどこなんだろう。イチャコは自分の上履きをそのままカバンに入れて持って帰っていったぞ。自分の上履きは人にいたずらされないように持って帰っているのかもしれない。

我はやれやれと思い、まずは下駄箱をきれいにした。掃除道具を持ってぴかぴかにしたよ。周りよりかなりきれいになったので、目立ってしまっている。汚いよりはいいだろう。うん。

さらに教室に戻り机をごしごしときれいにする。さらに破られた辞書や教科書も【復元】で元通りにしておいた。

イチャコよ、おぬしがどれほどいたずらしようと、我はそのすべてを元通りにしてみせるぞ。ふっふっふ、我は【諦めぬモノ】なり。おぬし程度が我を諦めさせることは出来ないのだ。

 

 

ーー理解不能

我は翌朝、昨日イチャコに汚された下駄箱の持ち主は誰なのか確認することにした。多分、お嬢様なんだろう。婚約者のお嬢様が邪魔だから、イチャコがいたずらしているんだろう。お嬢様には我がついているから、悲しい学園生活は送らせないぜ!

そんな我の推測は裏切られた。王子様と一緒にきたイチャコが、昨日いたずらしていた下駄箱に近づく。イチャコは下駄箱が見えるかなり手間で、「あっ、私の下駄箱が、すごいよ・・・・・・」って王子様に泣きつきながら言おうとしているのだ。王子はその言葉にイチャコの下駄箱を見る。

「ああ! 確かにすごいな! ラスメードの下駄箱だけ光り輝いている!」

うむ、その下駄箱は我が昨日ぴかぴかにしたからね!

でも、今、イチャコは「あっ、私の下駄箱が、すごい汚れている」って言おうとした? そりゃ自分で汚していたのだから、汚れているって言おうとするか。なんで、自分の下駄箱を汚そうとするんだ。

もしかして教室の机もイチャコのだったりするのか? ははは、そんなわけがない。どこの世界に自分の机を汚して、本や辞書まで破るヤツがいるというのだ。

さすがは異世界というべきだろうか。我の理解が及ばない。

イチャコは自分の机を汚していたのだ。下駄箱の時の再現VTRかと思ってしまったよ。何がしたいのだろう、イチャコは。もしかすると、「私いじめられてますぅ、助けて、王子様」作戦でもしているのかもしれないな。もしそうだとすると悪いことをしてしまったのかもしれない。

でも、これからもイチャコが同じ事をするなら、我も同じ事をし続けよう。ここで、我が先に辞めてしまったら、負けたような感じになってしまう。

 

 

ーーお嬢様は優秀でございました

お嬢様はすごかった。なんというか優秀だった。運動神経もよく、上級魔法も仕え、頭も良かった。周りに対する人当たりも良い。武術も細剣の使い方が上手だった。さらにはさすがお嬢様というべきか、ムチも上手に使っていた。そんなお嬢様は新入生ながら、秋からは生徒会に入会した。まじかよ、やるじゃん、お嬢様!

我は知り合いの活躍に喝采を送る。まぁ、我の一方的な知り合いなんだけどね。

そんな形で1年が終わろうとしていた。その間、我の姿が学園の中で発見されることはなかった。やはり、我の推測通り、みんな心が汚れておるわ。ふっふっふ、こうまで推測が当たると自分がこわい。

でも、我の推測も学園外では外れてしまった。残念だ。

貿易都市だけのことはあり、いろんな人間がいた。その中には我の姿を見れる者もいて、ちょっとした交流も持った。やはり心がきれいな者には我のすばらしさがわかるらしい。

マブダチではないので念話で話すことはできないけど、ジェスチャーとかでかなりの意思疎通ができた。いつか彼女達の国にも行ってみたいものだ。

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