馬車の中

123 パンダ狩り

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着ぐるみパンダはなかなか一人にならない。
朝食の後は、村長たちと村の中や、周囲の田畑を回っている。

なるほど、領主一族の者として視察をしているようだ。
あんな変わった恰好をしていても、さすがは領主一族ということか。
我はそっと着ぐるみパンダの後をつける。

 

◇◆◇◆◇

 

どうやら、この村での滞在は今日で終わりらしい。
昼前には次の村か町に出発だ。だが、やはり着ぐるみパンダは一人にならない。
護衛の者がいたり、側仕えの者がいたりで必ず誰かがついている。

なかなか思い通りにならぬものだな。

おっと、着ぐるみパンダが馬車に向かっている。
ここは事前に馬車に乗っておこう。

我は馬車の中にまだ誰もいないことを確認したあと、静かに中に入る。一番隅っこに邪魔にならないように肩を狭めて、竹の杖を両足の間に挟んでちょこんと座った。

馬車の中

着ぐるみパンダが馬車に乗り込んできた時、ちょっと驚いた様子だったが、我は気にするなと着ぐるみパンダに向かって頷く。

 

◇◆◇◆◇

 

馬車の中でも、着ぐるみパンダは一人にならぬ。
これでは、着ぐるみのモデルになったパンダがどこにいるのか聞くことができない。

生パンダはどこにいるのだろうか。

うむ、馬車に乗ったことはあまりないが、揺れが大きい。
やはり自分の足で歩くのが一番だな。

 

◇◆◇◆◇

 

馬車が止まった。
何事だろう? 次の村に着いたのだろうか?

我は馬車の外をそっとうかがう。
むむ、なんと、この馬車が武器を持った者達に取り囲まれている。
この馬車に金になりそうな物はつまれていないはずだ。

この馬車に乗っているもので珍しいものと言えば着ぐるみパンダだけだ。

・・・・・・。

!?

パンダ狩りか!?
回路が繋がるゴーレム

着ぐるみといえど、パンダ!
パンダを欲しいと思う者たちがいてもおかしくはない。
むしろ、ちょっと自分で着てみたいと思うはずだ。
我もちょっと着てみたいが、サイズが合わない。

馬車の中にいる側仕えの女が不安げに着ぐるみパンダに近づいた。そして、そっと着ぐるみパンダを抱きしめる。こんな時に着ぐるみパンダをもふもふしようとするとは、側仕えの女はなかなかやりおる。

「姫様、護衛の者達がおりますから、決して外に出てはなりませんよ」

おや、もふもふするために抱きしめたのではないのか。
うむうむ、主を大切に思うその心は大切だ。

「えぇ、私が外に出ても皆の足手まといになるだけですから」

着ぐるみパンダも側仕えの女の手を握りしめる。
着ぐるみパンダの手も心なしか震えている?

おし、ここは、こっそりと着ぐるみパンダに手を貸すことにしよう。
着ぐるみパンダに恩の押し売りをしてやる。
ふっふっふ、パンダの場所を聞きやすくなるぜ。

我はないわーポーチから、ノートを取り出して、<我はゴーレムなり>と書いて着ぐるみパンダに見せた。着ぐるみパンダは、我の達筆に驚いたのか「え?」と小さく呟いた。

我は馬車の戸を少しだけ開ける。外の様子をゴーレムアイを発動して完璧に把握する。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

我は右手の人差し指を伸ばし、銃のように構える。
狙い撃つぜ
狙い撃つぜ! と心の中で呟き、ラインライトでこの馬車を取り囲んでいる賊たちの武器をこっそり狙い撃った。

「なっ、武器が!?」

外から賊どもの慌てる声が聞こえてくる。
ふふっ、ラインライトマスターの我にかかればたやすいことだ。

我は反対側の戸にも移動する。
反対側の扉も少しだけ開けて、我がゴーレムアイが捉えた賊どもの武器をラインライトで狙い撃った。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

我は右手の人差し指に息をふっと吹きかける。ゴーレムだから息は吐き出せないのだけれど。
我はちらりと着ぐるみパンダを見る。唖然としたのか、ぽかんと口を開けている着ぐるみパンダに、うむと頷き、我は元通り馬車の隅にちょこんと座った。

賊どものうちの何人かは逃げたようだが、多くの者が突然のことに驚き、捕まったようだ。
いくら着ぐるみパンダが珍しかろうと、人の物を奪ってはダメだ。
欲しい者があるなら、自分で作るくらいの努力をしてほしい。我だって印籠を作ったのだから。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

!?

しまった!?
ご隠居様をやるせっかくのチャンスを逃してしまった。
こっそりと行動していたから、ゴーさん、レムさんを使うのを忘れてた。

我はすこしどんよりとする。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、憂鬱状態が解消しました}

護衛の者達から、着ぐるみパンダへの報告が終わった。
どうやら、ここの領主は今、体調を崩しているそうだ。領主の兄がいて、この着ぐるみパンダさえいなくなれば、その兄が領主につくことになるらしい。

なんというわかりやすいお家騒動。
まったく、やれやれって感じじゃない?

!?
いや、待て待て待て、これはご隠居様をやる絶好の機会だと思う。
お家騒動に勝手に首を突っ込み、権威を笠に着て仲裁する。

我には権威はない。が、この壊れぬメタルボディやラインライトがある。
まぁ、権威を力で補って、ご隠居様をやってみようではないか。

おし、我はこのまま着ぐるみパンダに勝手に手を貸そう。大抵の場合、パンダに悪いパンダはいない。だから、着ぐるみパンダも悪くないはずだ。

そして、生パンダの情報をもらう。
完璧な計画を立てることが出来、我は晴れ晴れとした心で馬車に揺られていく。

 

◇◆◇◆◇

 

着ぐるみパンダと一緒に各地の村を回る。
途中で馬車の中にいると、側仕えの女を避けるのが忙しいので、馬車の屋根に退避した。

最初から、屋根の上にいれば良かった。

着ぐるみパンダの道中の安全を確保すべく、我は小さい精霊達に忍者役を頼んだ。
なんとか、ジェスチャーで怪しいヤツを見つけたら伝えてくれとお願いする。

ふー、言葉が通じないのはまったくもって大変だ。
我がやりきったと満足げに馬車の上で仁王立ちをすると精霊達がもう戻ってきた。

「はっけん!」
「みっけた!」
「あやしいヤツ!」

なんと!?
もう見つけるとは、着ぐるみパンダへの刺客はそこら中にいるようだ。
我は小さい精霊達に、どこだとジェスチャーで尋ねる。

「この中」
「馬車の中」
「あやしい白と黒」

・・・・・・着ぐるみパンダ、奴自身か。
たしかに怪しいヤツにちがいない。

我はなんとか着ぐるみパンダは違うと伝え、この馬車の進む先や、周りでこちらをうかがっている者などがいたら教えてくれと頼んだ。

「りょうかーい」
「わかった」
「あいあいさー」

小さい精霊達は思い思いに飛んでいった。

「いなーい」「あやしいやつ、中のやつだけ」「あきたー」

小さい精霊達は飽きたようで、忍者役は日暮れまでには解散した。
精霊達はなんとも自由だ。

我は一人、馬車の上で竹の杖をつき、沈む夕日を眺める。

すっすっと、ゴーさん、レムさんの残像を残しつつ。
夕日をあびるゴーレム

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