竹の杖がない

133 忘れた竹の杖

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我はゴーレムなり。

秋姫の案内された門を通ると、森から抜けた草原に佇んでいた。
おお、よかった。我はこれでパンダを探す旅を継続できる。

おし、竹の杖を倒し……。あれ、竹の杖がない。

あれ?

我はぐるりと一回転してみるも竹の杖が見当たらない。
ないわーポーチの中をがさがさとあさってみても、印籠はあるが、竹の杖は入っていない。
もしかして、このあたらしく出来た小さなポッケに入っているのかと思い、手を入れてみるが何もない。

おう。これはあれだ。
忘れたみたいだ。竹の杖。パンダへと導く竹の杖。どうしよう。取りに戻ろうか?

いや、いやいや。思い出せ。我は最初は竹の杖なんて持っていなかった。
竹の杖に頼らずとも、我はパンダを見つけることが出来るはずだ。

おし、我は自分の直感を信じて、歩き始める。
待ってろよ、パンダ。

 

◇◆◇◆◇

 

我はただ適当に歩くだけではなく、ところどころ町や村で人の噂をこっそりと聞き、珍しい動物の話しを集めた。小さな噂も聞き逃さない、我のゴーレムイヤー。

{ログ:ゴーレムイヤーというスキルはありません}

……。

ゴーレムイ{ログ:ゴーレムイヤーというスキルはありません}ヤー……ログが言い終わる前にかぶせられた……で集めた噂をまとめたところ、なんとかという大きな街にある神殿に聖なる獣の卵が祀られているそうだ。

何百年も前からずっと祀られていて、生まれるのが今か、今かと待たれているらしい。
正直、本当にそれが卵だとしたら、中身は腐っているのではないかと思うのだが、ここは異世界。自分の前世の常識で物事を計ってはいけない。

もしかすると、その聖なる獣の卵の中にパンダがいるのかもしれない。
白と黒のパンダ。モノクロだから、聖なる獣と言われていてもおかしくない。うむ、卵からパンダが生まれる可能性がなくはない。これは調べてみねばなるまい。

我はそのなんとかという大きな街を目指して歩き出した。

 

◇◆◇◆◇

 

ふー、道路に標識がほしい。
大きな街だというのに、たどりつくのに時間がかかったよ。
最初に反対方向に行っていたのが、目的地への到着が遅れた大きな理由だな。

門に並んでいる列の最後尾に我も並ぶ。我は【姿隠し】を発動しているから、列の横をそっとすり抜けることは出来る。でも、できるからといって、それをするのかというのは別問題だ。

我は品格のあるゴーレム。
他の誰が見ていなくとも、我自身が見ているのだ。自分自身に恥ずべきことはできない。

我が一人で納得していると、ドンと後ろから来た荷車を引いた男にぶつかった。
うむ、他の人に見えていないから、気を付けないとならん。

我は他の人にぶつからぬように、ポジション取りに気を遣いながら列に並ぶ。

もうじき、我の番だ。
ただ一つ心配ごとがある。お金を払っている人が多い。通行税なのだろうか。我の手持ちの全財産で足りるだろうか。さすがに銅貨7枚もしないだろう。

我がそわそわとしつつ前の方をうかがっていると、我がゴーレムアイが料金について書かれた看板を捉えた。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

看板には、いろいろ書かれているが、ゴーレムに関する記述がない。
しかたない、ここは普通の人と同じ額を払っておけば良いだろう。

我は、銅貨一枚を門番がお金を入れている籠の中にポイッと投げ込み、街の中へと入っていった。

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