MPを与えるゴーレム

134 聖なる獣の卵

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我はゴーレムなり。
聖なる獣の卵が祀られているという神殿がある街の中にようやく入ることが出来た。

多分、この大通りを歩いて行けば、神殿に着くのだろう。
我は通りの両側にある店の売り物を眺めながら、神殿に向かう。屋台で食べ物が売られているが、我は食べる事ができないから、食べ物の店はスルーする。その代わりに、雑貨やうさんくさいがらくたが売られているところではじっくりと品物を見る。

もしかするととんでもない掘り出し物が見つかるかもしれない。
普通の商人にはわからずとも、我のゴーレムアイなら、そのものの隠れた価値をいともたやすく見破るだろう。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

我の今の全財産は銅貨六枚。……六枚あるよね? 我は、ないわーポーチの中を確認する。一枚、二枚、三枚、四枚、五枚……あれ、五枚しかない。どこかで落とした? ま、まぁ、いい。我の全財産は銅貨五枚。掘り出し物を見つけてやるぜ。

 

◇◆◇◆◇

 

なかなか我の心にグッと来る物が見つからない。
掘り出し物は諦めた方がよさそうだ。

我は近づいてきた神殿の中へと足を踏み入れる。

 

◇◆◇◆◇

 

どうやら、あの柵の中央で人が近づけないように祀られているのが、聖なる獣の卵のようだ。卵というけれど、けっこう大きいな。

我は人混みの隙間をすっ、すっ、とすり抜けながら、柵の近くまで進んだ。

チャリン、チャリンと卵の周りには、お金が投げ込まれている。
んー? お賽銭みたいなものか? でも、手を合わせて拝んでいるような人はいないし、よくわからないね。でも、まぁ、皆がお賽銭を投げているのだ。我もマネしてお賽銭を投げておこう。

ないわーポーチから銅貨を一枚撮りだして、ぽいと放り投げる。とりあえず、間違っているかもしれないが、二礼二拍手一礼をしておこう。思いの外、二拍手で大きな音がなってしまい、姿は見えないが音だけ響いて周囲を驚かせてしまった。失敗、失敗。

我はその後も柵にぴったりと身体をくっつけて、人の邪魔にならないように聖なる獣の卵を観察する。

あの卵に近づいて確認したいのだが、さすがにこれだけ人が多いと無理だろう。
夜、人混みがなくなってから確認しよう。

我は夜になるまでじっと待っていた。
途中で、神殿の神官や修道女のような者たちが、卵を拭き清めていた。我も自分の身体を拭き清めたい。神殿に来る途中の店で布を買いたかったが、微妙にお金がたりなかったのだ。お金は大事だ。

日が落ち、お賽銭を神殿の者が集め、終わった後、神殿の扉が閉められた。ガチャリと外から鍵をかけた音が聞こえた。

ふっふっふ、これで我の調査を妨げる者はいない。

我は抜き足差し足で聖なる獣の卵に近づいた。

 

◇◆◇◆◇

 

我は卵をゴーレムアイで観察する。生きているのか、死んでいるのか、我のゴーレムアイならば簡単に見抜けるはずだ。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

ふむ、我のゴーレムアイでもよくわからないとは、なかなかやるな。この卵。

我はそっと卵に手を添える。布があれば、我もきゅっきゅと卵を磨いてやりたいが、布はないので、卵に手を添えるだけだ。

{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを10吸収された}

我は突然、頭の中に響いてきたログにビクッとする。
よくわからないが、MPを吸収されたらしい。なおも手を卵に添えているとまたログが響いてくる。

{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを10吸収された}

これは、ひょっとして、あれか。
MPを与えれば卵が孵るというやつではなかろうか?

うむ、そうとわかれば我がMPを卵に与えてみよう。

{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}

まだ卵に変化はない。

{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}

我はさらに卵にMPを注いだが、まだ変化がない。
まだまだ足りないのだろう。早く大きくおなり。

{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}

おや、卵に少し変化が訪れた。これは竜の卵の時と同じような変化だ。
卵が銀色に染まっていく。我のメタルボディと似た色合いになってきたぞ!
がんばれ、我! がんばれ、卵!

{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ。卵はMPを拒絶した}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ。卵はMPを拒絶した}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ。卵はMPを拒絶した}
{ログ:ゴーレムは聖なる獣の卵にMPを100注いだ。卵はMPを拒絶した}

おっ、ログに変化が現れたぞ。もう魔力は十分らしい。卵を見ると、卵は完全に銀色になっている。
これは中から聖なる獣が卵を割って出てくる流れだろう。

我がどきどきしながら卵を見つめていると、卵の反対側から、きぃという扉が開くような音が聞こえてきた。

我は卵の反対側に回り込む。

そこには、卵の表面にドアがあり、ドアから外を覗いている銀色の毛並みの動物がいた。多分、動物だと思う。でも、パンダじゃない。白と黒じゃない。

動物は我を見ると驚いたように、目を大きく見開く。動物は、そっと卵の中に入っていき、卵のドアが閉められた。

すると、卵には何もなかったかのように、ドアだった部分が見当たらなくなった。卵は銀色のままだ。

……ま、まぁ。大丈夫だよね。

卵の中には、やはりパンダはいなかった。
ここにもパンダはいない。パンダを探しにいこう。

我は翌朝、神殿の扉が開けられると同時、神殿を後にした。
卵を確認した神官の驚く声が聞こえてくる。聖なる獣は元気そうだったから大丈夫なはずだ。そのうち、卵から出てくるだろう。

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