おびえるゴーレム

135 情報収集

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聖なる獣とやらもパンダではなかった。
パンダはどこにいるのだろうか。

このまま闇雲にパンダを探すのではなく、せっかく人が多い街へと来たのだ。一度立ち止まり、パンダに関する情報を集めるべきではなかろうか。うむ、そうしよう。

情報収集と言えば、井戸端か、酒場だろう。
まだ朝だから酒場に行っても重要な情報は集まらぬだろう。この時間は井戸端だ。きっと朝の洗濯におばちゃん達が井戸端会議をしているはずだ。

我はてくてくと井戸端を探して歩く。
多分、住宅がありそうな方に行けば見つけることができるはずだ。

 

◇◆◇◆◇

 

あった。井戸だ。

そして、井戸端では我の思ったように洗濯をしているおばちゃん達がいる。

ふっふっふ、我の予想の完璧さ。自分が時々怖くなるね。

我は井戸の周りでたらいを持って洗い物をしているおばちゃんたちにそっと近づき聞き耳を立てる。パンダについての情報がでてくるはずだ。

「ねぇ、あんた聞いたかい?」
「何をさ?」
「聖なる獣の卵が銀色に変わったらしいよ」
「なんだって、誰かがイタズラして銀色に塗ったってことかい! バチあたりな!」

おばちゃんが洗っていた洗濯物をたらいの中にたたきつける。バシャッと水が飛び散った。
突然のおばちゃんの激おこっぷりに我は両手で顔を隠して、ひええと身を竦める。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、衝撃状態が解消しました}

落ち着け、別におばちゃんは我に怒っているのではない。我はMPを与えただけで、銀色に色を塗った訳ではないのだから、怒られるようなことをしたわけではない。

周りのおばちゃんたちは慣れたものなのか、激おこっぷりを華麗にスルーして、洗濯物を洗う手を休めない。

「違うよ。誰かが卵にイタズラをしたって訳じゃなくて、卵自体が銀色に輝いているらしいのさ」
「どういうことだい? 昨日、何かあったのかい?」
「そういえば、昨日、神殿内に鐘の音がなったらしいじゃない。それが関係しているのかもしれないね」
「ああ、うちの旦那も昨日の昼すぎに鐘が鳴ったって言ってたね」

我も昨日はほぼ一日神殿でじっとしていたけど、鐘なんて鳴ってなかったよ?

「なんでも、キン、キンと二度も鳴ったらしいじゃない。聖なる獣の卵が孵る前触れなのかもしれないね」

あぁ、我が二礼二拍手一礼した時の音のことか。鐘じゃなくて、拍手の音だよって教えてあげたい。
我がそんなことを考えていると、おばちゃんの一人がうんしょっと立ち上がり、水をくむために釣瓶桶を井戸に投げ込んだ。

「あー、水をくむのもしんどいもんだね」
「滑車の滑りが最近特に悪くなってるから直してもらわないと」

おばちゃん達は洗濯を終えるとそれぞれの家に帰っていく。

我は井戸端にぽつんと一人で佇む。おばちゃんたちの井戸端会議を立ち聞きしてもパンダに繋がる情報はなかった。こんなこともある。

我は情報代として滑車に手を当てて【復元】しておく。試しに釣瓶桶を井戸に入れて水をくみ上げてみたが、スムーズに動く。うむうむ、これでよいだろう。

 

◇◆◇◆◇

 

おばちゃんたちの井戸端会議では、情報収拾できなかったが、我は気を取り直して街の中を歩く。
この街には、いろいろな人がいるから、パンダを知っている人がいてもおかしくない。今度は、酒場で情報収集だ。

ん?

あれは、たしか冒険者ギルドのマーク。
冒険者ギルドには酒場も併設されていたはずだ。何より、我も冒険者登録しているから、冒険者ギルドなら、我が姿を現しても大丈夫なんじゃなかろうか。

我はないわーポーチの中に、ブラックカードがあることを確認する。
この冒険者の証のカードがあれば大丈夫だろう。

我は冒険者ギルドの入り口でしばし考え、【姿隠し】を解除して誰にでも姿を見えるようにした。

我は、ギィっときしむドアを押して、冒険者ギルドの中へと足を踏み入れた。

 

◇◆◇◆◇

 

我が足を踏み入れると冒険者ギルドの中が静まりかえった気がする。

何故だ?
やはり、メタルゴーレムだから珍しいのだろうか。

だが、我も一応、冒険者だ。だから、冒険者ギルドに我がいるのはおかしくない。

とりあえず、我は掲示板を確認してみる。ゴーレムアイで丹念に掲示板に貼り出された情報を見るもパンダに繋がる情報はない。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

掲示板に掲載されているのは、よくあるような採取や討伐、護衛の依頼ばかりだ。

我は首を左右に振り、しかたなく受付へと歩いて行く。
我がてくてくと歩いていると、我の前に、冒険者が立ちはだかった。

なんだろう? 我に何か用だろうか?

我が首を傾げていると、冒険者が「おい!」というのと同時に、奥の扉が勢いよく開く。扉から走り出して来た男が、その勢いのまま目の前の冒険者にドロップキックをかました。

我の目の前をドロップキックをされた冒険者が、「ごふぅッ」という声と共に飛んでいく。

突然のことに我はしばし、飛んでいった冒険者と、ドロップキックをかました男を交互に見る。

いきなり、ドロップキックをかますなんて、なんて世紀末な冒険者ギルドなのだろう。我は足を踏み入れるところを間違ったのかもしれない。

ドロップキックをかました男は、すぐに立ち上がった。我の前に何事もなかったように歩いてくると、額に汗を浮かべながら、話しかけてくる。

「や、やぁ。オレはここのギルドマスターをしているジャスというものだ」

なんと、この男がここのギルドマスターなのか。

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