ブラックカードをちらつかせるゴーレム

136 情報収集<冒険者ギルドにて>

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 我はゴーレムなり。
 いきなり人にドロップキックをかますような世紀末なギルドに来ているゴーレムなり。

 我は倒れている男からそっと目を離し、ジャスと名乗った男の方を見る。

 そして、ないわーポーチから、ノートを取り出して、<我はゴーレムなり>と書いているページを開いて見せた。ふっふっふ。よく使うページの角は折っているから、すぐに開くことができる。

 ジャスと名乗った男は引きつった笑顔を浮かべて、「やっぱり、本物か……」と小さく呟いた。
 我が首をひねると男は慌てた様子で問いかけてくる。

「それじゃあ、あなたが、あのブラックカードを持っているゴーレムさんということでいいのかな?」

 そういうことか。ブラックカードを見たいのだろう。たしか身分証にもなると言っていたような気もする。免許証の確認と一緒のような物だな。我はないわーポーチをごそごそとあさり、ブラックカードを取り出す。どやって感じでブラックカードを男に見せた。

「これは、本物か。まさか、この街に現れるなんて」

 男は我のブラックカードを見て、固唾を呑んでいる。ふっふっふ、ブラックカードは珍しいはずだから、見ることが出来てうれしいのだろう。

「もうカードはしまってくれ。それでゴーレムさんは何をしにこの街に来たんだ?」

 我はブラックカードをしまい、男にパンダを探している旨を説明する。
 以前書いたページも使い、白と黒の動物を探しているんだと言うことを熱くアピールする。多分、近くには笹もあるであろうことを説明する。我のパンダを求める熱い思いがきっと伝わるはずだ。我はやりきったという感じで満足して、額の汗をぬぐった。ゴーレムだから、汗はかかないけれど。

「何がいいたいのか、わからないが、その動物みたいなものを探しているということか?」

 ジャスと名乗った男には、我の熱い思いはあまり伝わっていなかったようだ。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、がっかり状態が解消しました}

 やはり、この世界ではパンダはあまり有名ではないのだろう。しかし、動物を探しているということは伝わっているのでよしとしよう。

 我は、ジャスと名乗った男にしっかりと頷いた。すると、ギルドの入り口を勢いよく開けて走り込んできた男がいる。まったく、騒々しいギルドだ。やはり、ここは世紀末ギルドだな。

「た、大変だ! あっ、ギルマス! ちょうどいいところに! 大変なんだ!」

 何が大変なのかまったくわからないが、焦っているのはよくわかる。
 慌てた様子で走り込んできた男がギルマスに駆け寄る。

 !!?

 まさか、ドロップキックをするのではあるまいな!
 ここでは挨拶がドロップキックとか、あっ、違った。普通に近寄っただけだ。

「神殿に祀られている聖なる獣の卵が、銀色になったんだ!」

「な、なんだと!? 銀色? あれは白い卵だったはずだぞ!」

「だから、町中はそのことで持ちきりなんだ! 昨日、神殿で二度鐘の音がなったらしいが、それとあわせて、聖なる獣がそろそろ誕生するのではってことみたいだ」

 我が卵にMPを与えて、卵が銀色になったのはまずかったのだろうか?
 でも、聖なる獣とやらも卵の中からドアを開けて、外の様子を見ていたから問題はないと思うのだけど。

「なんてこった、ゴーレムさんがいる時にそんなことが……」

 ジャスと名乗った男は何かに気づいたように我を見つめてくる。
 ジャスにつられて、駆け込んできた男も我を見る。

「あの、ギルマス、この銀色のやつは?」

 駆け込んできた男の質問に、ジャスと名乗った男は、苦い顔をして呟く。

「ゴーレムさんだ」

「なっ、これがあのゴーレムさん!?」

 駆け込んできた男が驚いたようにいきなり叫んだ。

「これが、ギルドの特殊条項の筆頭に載っているあのゴーレムさっ「パアン」」

 駆け込んできた男が叫び終わる前に、ジャスと名乗った男が平手で叩いた。
 ……もしかして、このギルドが世紀末なのではなくて、ジャスと名乗った男の思考が世紀末なのか? ギルドの特殊条項って我が知らぬ間に何かできたのだろうか?

 我がノートに<特殊条項って?>を書いて見せる。

 ジャスと名乗った男は、我の質問を無視して質問をしてきた。

「あの、ゴーレムさん。聖なる獣の卵に何かしましたか?」

 我はそっと目をそらす。

 何かしたと言われれば、MPを与えたが、それだけしかしていない。我が視線をそらしたことで、何かを察したのか、ジャスと名乗った男は大きくため息をついた。

「ゴーレムさん、ギルドの資料室に動物についてまとめた本があるので、それを調べて見てはどうでしょうか?」

 おっ、なんか、ジャスと名乗った男は見逃してくれた。
 こやつ、世紀末な男かと思ったが、案外良いヤツかもしれない。

 我は案内された資料室に入り、ゴーレムアイで動物についてまとめた本、つまりは動物図鑑を読みはじめた。

 我がゴーレムアイにかかれば、パラパラとめくればあっという間に情報収集は完了だ!

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 ◇◆◇◆◇

 我が動物図鑑をじっくりと読んだところ、パンダっぽい幻の動物は茶の道、ティーロードと呼ばれる道の先にある国にいるのではないかということがわかった。

 我が、そのことをジャスと名乗った男に伝えると、男は簡単な地図を書いてくれた。
 我はお礼を伝え、男から地図を受け取る。我がごそごそとないわーポーチから、お金を取り出そうとすると、「冒険者ギルドが冒険者をサポートするのは当然だ」と言って、お金を受け取らなかった。この男、良いヤツだ!

 我はさっそうと冒険者ギルドを後にする。
 なぜか、ジャスと名乗った男が街の入り口までついて来ようとした。あぁ、一人だと魔物と間違われるからか。

 そこまでジャスと名乗った男に迷惑はかけられない。
 我は【姿隠し】を発動する。

「なっ、消えた」

 ジャスと名乗った男の驚く声が聞こえる。ノートを1ページ切り取り、<さらば>と書いてジャスの前の地面に置いた。ふっふっふ、かっこいい別れ方が出来た気がする。

 我は誰からも見られていないが、一人で颯爽と出発した。

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