後を付けるゴーレム

138 薬師の老婆と弟子

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我は大岩がふさいでいた道をさらに先に進む。
パンダを見つけるために我は休まずに進んで行く。

やはり、大岩が道をふさいでいたために、道が混んでいる。
しかし、なぜあんなところに大岩があったのだろうか?
大雨でも降ったのか、地震でもあったのか。でも、そんな事があったら、我でもわかる。まぁ、いいや。考えてもわからぬ事は、考えないようにしよう。

我はずんずんと、茶の道ティーロードを進む。
眠る必要も休む必要もないのでずっと歩きっぱなしだ。

ティーロードを進んでいると村や町が多い。さすがは茶の道、ティーロードといったところか。
やはり人の流れがあるから賑わっている。うむうむ。道は大事だな。

 

◇◆◇◆◇

 

何日も休まずに歩いていたので、小さめな町で小休止することにした。

なんでもこの村の近くにはきれいな滝があるらしい。我は、滝にうたれる修行ができるんじゃない!? と色めきたったが、どうやらかなり大きい滝みたいで滝壺も深いらしい。小柄なメタルゴーレムの我だと滝にうたれるどころか、滝壺の中に沈んでいる状態になってしまう。

我はがっかりしつつも、観光客用に整備された道を歩く。
滝を見学に行く観光客の後をつけていくので道を間違う心配もない。

しばらく歩くときれいで大きな滝があった。見る価値があるではないか。
人々がここに来るというのもよくわかる。

我が腰に手を当てて滝を眺めていると、水の精霊達がふよふよと近づいてきた。
水の精霊達が「なに?」「なんか用?」「なにしてるの?」と質問してくる。

我は、自分の胸をトントンとたたき、心の栄養補給さと伝える。しかし、水の精霊達には伝わらなかった。水の精霊達は、滝には竜がいると言っていたが、我は竜には興味はない。我は竜ではなく、パンダに会いたいのだ。何より、人が近づけないようになっている観光地の滝に勝手に入るほど、マナーが悪いゴーレムでもない。

しばらく水の精霊達とままならぬままに語り合い、我は滝を後にした。

滝が名所だった村で1日休む。
しかし、ただ休むだけではない。酒場にこっそりと忍び込み、人々の会話をこっそりと聞く。
これは情報収集。必要な事だ。

どうやら、ティーロードから少し外れたところにある村で病人が出たらしい。この町にいる薬師の一人が明日その村に向かうそうだ。

我はゴーレムイヤーでその後もしっかりと情報を収集していった。

{ログ:ゴーレムイヤーというスキルはありません}

 

◇◆◇◆◇

 

翌朝、日の出と同時に、病人が出た村に薬師が向かっていった。
薬師はけっこうな年齢のようだ。荷物を持った幼い弟子と一緒に町を飛び出していく。
あんな老婆と子供だけで村に向かうのか?

我のゴーレムアイでは、周囲に危ない魔物はいないようだが、少しばかり危険じゃあるまいか。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

しかたない。
ここは我がこっそり後ろをついていってあげることにしよう。我が探しているパンダは逃げることはないだろう。というよりも、パンダがどこにいるのかわからないから、別に急いでいないしね。

我は老婆と子供のあとをついていくことにした。

 

◇◆◇◆◇

 

病人が出た村までは結構な距離があった。
薬師一行は、老婆と子供なので途中で休憩を取りながら村へと向かっている。

休憩の時に、老婆や子供に見られた気もするが、気のせいだろう。
【姿隠し】を発動中の我は、心の清らかな者にしか見えないのだから。

……。

ということはもしかして、あの老婆と子供の心が清らかだったら我の姿が見えているのか?

どうしよう。

ちょっと我の身体はほこりっぽくないかな?
ちゃんとピカピカしているかな?

我は自身の身だしなみを気にしつつ、老婆と子供の後を歩いたり、時には前を歩いたり、横を歩いたりして村へと辿りついた。

 

◇◆◇◆◇

 

村の中はどんよりとしている。
薬師の老婆は、村の入り口に立っていた男に案内され、病人のいる家へと向かった。我も一緒に病人のいる家へと向かう。

薬師の老婆と弟子の子供が家に入ったので、続いて我も入ろうとしたら、扉がバタンと閉められた……。

哀しい。
人に姿が見えていないとはいえ、哀しいものだ。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、悲哀状態が解消しました}

我は窓際に行き、中をこっそりと覗く。
我がゴーレムアイとゴーレムイヤーを駆使すれば、中の状況なんて簡単に把握出来る。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}
{ログ:ゴーレムイヤーというスキルはありません}

病人を診ている薬師の老婆、むぅとうなっている。
どうやら思ったよりも病人の病が重いらしい。特別な薬が必要だそうだ。

この村から、さらに奥に行くと深い森があり、その森の中にある木の実が必要らしい。
深い森の奥には魔物もいるそうで、木の実を取りに行くのは生命がけとのこと。

老婆の説明を聞いた村の若者や狩人達は、家の中から急いで飛び出していった。
どうやら薬を取りに行ったみたいだな。

扉が開いているので、我は中に入り、病人の顔を見る。

おおぅ、子供が多い。どうやら村の子供達が病気にかかっているようだ。だから、あれだけ村の大人達が慌てて薬を取りに行ったのだな。

薬師の老婆、家の中にいる村の者達に聞かせるように語り出す。

「精霊樹の木の実さえあれば、この子供達の薬はすぐにできる。男達を信じて待つことにしよう」

そうか、精霊樹の木の実さえあればいいのか。
おし、ここまで来たついでだ!

我が森の中に入って、その木の実をとって来ようじゃないか!

我は飛び出していった男達を追いかけるように、急いで家を飛び出した。

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