ゴーレムと木の実

139 薬の材料、持ってた!

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家を飛び出した我は、ゴーレムアイで男達が駆けて行った方向を探る。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

我はぐるりと辺りを見回して、見当をつける。
多分、あっちかな。うむ、あっちの気がする。あっちに行ってみよう。

我は男達が駆けて行った後を追いかけて駆け出す。
薬師の老婆が言っていた精霊樹の木の実を採ってくるため、急がねばならん!

……精霊樹の木の実?

我はぴたりと足を止める。

精霊樹の木の実って聞いたことがある気がする。

着ぐるみパンダ!
そう、あれは着ぐるみパンダに拾って上げた木の実も精霊樹の木の実だったはずだ。

我はごそごそとないわーポーチの中を探る。
我が今までひろい集めてきた木の実コレクションの中を探る。

あった。というか、たくさんある。形のいい木の実。
うむ、何度見ても良い形だ。これが精霊樹の木の実であれば、これを使えばいいのではなかろうか?

我は飛び出した家に戻った。

 

◇◆◇◆◇

 

我は家の前で考える。
どうやって渡せばいいのだろうか?

とりあえず、ノートに<精霊樹の木の実>って書いて、老婆の前に置いてみるか。

我は家の扉を開けて中に入った。

ぎぃっときしむ扉の音。

家の中にいる人達の視線がこちらを向く。でも、【姿隠し】を発動している我の姿は見えていないはずだ。我は薬師の老婆の横までてくてくと歩いた。

やはり、薬師の老婆と弟子の子供が我を見ている気がする。なんか視線が我を追ってきている。我が意識しすぎなだけなのだろうか。

まぁ、いいや。
我は老婆の前でノートから<精霊樹の木の実>と書いたページを破り、精霊樹の木の実をテーブルの上に一つ置いた。

薬師の老婆が大きく目を見開く。

「なっ、こ、これは精霊樹の木の実!? それも真なる木の実じゃ!!」

木の実を見た老婆が驚いている。我も突然の老婆の大声に驚いている。周りの村人達も驚いている。つまりは皆、驚いた。

「先生? 真なる木の実とはどういうことですか?」

「精霊樹にもいろいろあってな、真なる木の実は、精霊に愛された者にしか見えず、その手に取ることができないのじゃ」

「それでは、これは精霊樹の木の実であっても、薬の材料にはならないのでしょうか?」

えっ、そうなの!? 我は弟子の子供の言葉に驚き、薬師の老婆の顔を見た。
種類が違うから代用できないのだろうか……。

我がドキドキしながら、老婆の顔を見ていると老婆は首を左右に振った。

「いや、薬の材料になる。むしろ、品質があがる。ただ、もう二つほどあれば完治させることができるのだが、一つだけでも症状を緩和させることはできる」

よかった。薬の材料になるらしい。
あと二ついるのか。我はないわーポーチをごそごそとあさる。

家の中にいた村の者達が薬師の老婆に近寄っていく。

「先生。それでは、その木の実で薬を作れるのですね」
「ああ、これで子供達は助かるぞ。男達が精霊樹の木の実を拾ってくれば、十分な量の薬ができるので完治させることもできよう」
「よかった! これで助かるよ」

なんか、村の者達と老婆が盛り上がっていて近づけない。

我は、ないわーポーチから取り出した三つの木の実を手に持ってどうしようかと考える。
こちらを見ている弟子の子供と目が合った。

やはり、見えてるよね?

我はそっと追加で三つの木の実を子供の方に差し出す。
弟子の子供はおそるおそる近寄ってきた。

「えっと、変なポーチをつけた人形さん。くれるのですか?」

変なポーチをつけた人形って我の事?
ないわーポーチの柄は確かにないわーって感じだけど、ちょっとひどくない?

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、憂鬱状態が解消しました}

まぁ、いいや。相手は子供だ。我は大人だ。寛容な心でポーチの件は聞かなかったことにしよう。
我はその通りだと示すために、子供に向かってしっかりと頷く。

「あ、ありがとうございます」

子供はおそるおそる我の手から三つの木の実を受け取った。
我は気にするなと手を振り、扉の方に向かう。ないわーポーチの中にはまだ木の実はたくさんあるからね。

「あ、あのお礼は!?」

弟子の子供が近寄ってきて、お礼について聞いてきた。

……お礼?

身体を磨く布かブラシが欲しいけれど、なんかお礼のために木の実を渡したと思われるのもいかがなものか。

大切な物(布かブラシ)は自分で手に入れないとね。

我は礼など不要という意思を込め、首を左右に振り、扉を開けて家を出た。
最後まで見なくても、大丈夫だろう。多分。

病気が落ち着いたら薬師の老婆と弟子の子供は、村人達が町まで送ってくれるだろう。

おし、ティーロードに戻って、パンダ探しの旅に戻ろうではないか。

 

 

ーーその後の村ではーー

 

薬師の老婆が作った薬で村の子供達の病気は完治した。

森の奥に精霊樹の木の実を採りに行った男達は、全員無事に戻ってきた。
男達は精霊樹の木の実を採ってくることが出来ず全員が落ち込んでいた。しかし、すでに薬が作られ、子供達が完治していることを知って多いに喜んだ。

その後、予防として薬を少しだけ村の者達も飲むことで病気が拡がることはなかった。

薬師から、無償で精霊樹の木の実を置いていった者、変なポーチをつけた銀色の人形のことを聞いた村人達は、銀色の人形を守り神として祀った。

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