ゴーレムと暗雲

140 暗雲と輝く身体

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 我はゴーレムなり。

 パンダを探してティーロードを歩んで行くゴーレムなり。
 我がなぜ、パンダを探しているのか?

 それはパンダがかわいいからだよ。
 白と黒。あの絶妙な色加減を見たいと思わない者はいないだろう。

 ……いや、まて、パンダがかわいいからと言って、こんなに何日も探し回るだろうか?
 さすがに、我がパンダを探すのには別の目的があるはずだ。

 うーん、うーん、うーん。
 我は腕を組み、考えながら、ティーロードを歩む。

 はっ!!?
 こんな時はノートを見ればいい。しっかり者の我は、ノートにきちんと目的を書いているはずだ!

 我はないわーポーチからノートを取り出す。
 ああっ、木の実が落ちた!

 木の実を大切にないわーポーチに戻してから、我はノートをぱらぱらとめくった。

 ふふふ、ノートの端に書いたパラパラマンガいいできだ。
 我はパラパラと何度かノートをめくり、パラパラマンガを楽しむ。

 むっ! あった!

 <パンダ、未だ見つからず。パンダパンダ>

 ……。

 我はもう一度ノートをじっくりと見る。

 <パンダ、未だ見つからず。パンダパンダ>

 …………。

 うむ、パンダパンダ。

 我はノートをぱたりと閉じてないわーポーチにしまった。
 過去を振り返ってはダメだ。大切なのはこれからどうするかということ。

 パンダに出会えば、我がパンダを探していた理由がきっとわかるはず!

 我はゴーレムアイを使って、念の為に周囲にパンダがいないかを確認した。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 我がティーロードを歩いていると、黒い暗雲が立ちこめている一帯が遠くに見えた。
 あの辺りは天気が悪そうだ。雨に濡れないようにあの辺りは避けていこう。

 我が周囲の環境にも注意しながら、歩いて行くと何体かの石像が並んでいた。

 ティーロードを進む人はあまり立ち止まったりしていないけれど、石像の周囲はきれいに掃除がされている。なにより石像たちにも目立った汚れがない。

 我は石像を周りをぐるりと歩く。

 ふぅ、なかなかいい仕事をしている。
 丁寧な拭き掃除がされている。

 我は自分の身体をじっと見る。最近、身体をきゅっきゅと拭けていないから、薄汚れている。

 はぁ、我も身体をきれいにしたい。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、憂鬱状態が解消しました}

 おし、そうとなったら、我のやるべきことはただ一つ!
 この石像を掃除している者を待って、掃除の仕方を確認しようではないか!
 そしてあわよくばその掃除道具を借りて我の身体をきゅっきゅと拭いてやる!

 我は石像の横に並んで、石像と似たようなポーズをとる。

 メタルと石という違いはあるが、我はゴーレムだから、石像の横に並んでいても違和感はないだろう。
 何より、【姿隠し】を発動しているから、心の清い者以外には見えないからね。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 我がポーズをとり続けること4日。
 時折ポーズを変えながら待っていたら、掃除道具を持った中年の男とその子供と思われる2人の子供がやってきた。

 中年の男の表情は優れない。
 なんだろう、子育てに疲れているのだろうか?

 中年の男と子供達は石像の周りの掃除を始めた。
 我は両腕を組み掃除の様子を見守る。

 うむ、細部まで丁寧に掃除をしておる。
 素晴らしい!

 我は一人うむうむとうなずく。

 すると子供達が近づいてきた。
 石像を掃除する子供達だ、当然心も清いのだろう。多分、我の姿が見えているのだ。

 子供達の目と我の目が合う。
 子供達は手に持った汚れた布と我の身体を交互に見る。

 子供達は、「この汚れた布で拭く?」「汚れた布で拭いたら汚れるよ」と二人で相談を始めた。

 ……もしかして、我も掃除してくれようとしている?

 我も、その汚れた布で拭いてもそんなにきれいにならないと思うよ。
 ピカピカになりたいけれど、汚れた布で磨かれるのはちょっと遠慮したい。

 我が内心ドキドキしながら、子供達の出方を待っていると子供達は中年の男の方に走っていった。

 中年の男に子供達が話しかけている。

「きれいな布ある?」
「あの銀色の像を拭きたいの」
「銀色? 見えないけれど、銀色の像があるのかい?」
「あるよ! ほら、あれ!」
「ちょっとほこりっぽいから拭きたいの」
「うーん、それじゃこの布を使っていいよ」

 子供達は汚れた布を中年の男に渡し、きれいな布を受け取った。
 そして、きれいな布を持ち、我の方へとやってくる。

 ドキドキと我の胸の鼓動が高鳴ってくる。心臓はないけれど。

 子供達は我の前へと駆け寄ってくると、にこっと笑い、きれいな布で我の身体を磨き始めてくれた。
 我は磨きやすいように、両手を水平に広げる。

 きゅっきゅと子供達が我を磨いてくれる。
 一人の子供の磨く手がないわーポーチに近づく。子供はないわーポーチを見ると表情を変えた。
 ないわーって表情で我のポーチを見る。

 その表情に気がついたもう一人の子供が、「どうしたの?」と言いながら、ないわーって表情の子供に近づいた。そして、ないわーポーチに気がつき、表情を変えた。

 ……。

 ……しかたないのだ。
 ないわーポーチは取り外し不可だから、しかたないのだ。

 子供達はその後、表情を直し、我の身体をきゅっきゅと磨いてくれる。
 子供達が磨いてくれた我の身体はピカピカになった!

 うぅ、うれしい!
 久しぶりに我の身体がピカピカだよ!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、感激状態が解消しました}

 身体を磨いてくれた子供達に向かって我は右手を差し出す。
 子供達は我の右手と我の顔を交互に見やる。子供達は二人で相談をし、真剣な顔になるとそれぞれの右手でちょきを出した。

 負けた……。

 じゃんけんじゃないのだけれど。

 子供達は笑顔で我に手を振り、中年の男と一緒に帰って行く。
 何度か振り返って手を振ってくれるので、我もその度に手を振り替えした。

 うむ、身体もピカピカになったし、なんだか久々にさっぱりした気分だ。

 ただ気になるのは、子供達と中年の男が帰っていったのが、あの暗雲が立ちこめている方なのだ。
 あの暗雲はこの数日移動していない。むしろ、ちょっとその範囲が大きくなっているように見える。

 我は暗雲をじっとにらみ、子供達の後を追うことにした。

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