枝の先を目指すゴーレム

141 大きな樹に登る

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 我はゴーレムなり。

 中年の男と二人の子供にばれないように、こっそりと後を付けた。
 気分は名探偵ゴーレム。

 やはり、我が思った通り、彼らは暗雲の方へと向かっていく。

 あの黒い雲は何なのだろうか。
 我がゴーレムアイはすべてを見通す!

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 ……。

 我は静かに彼らの後ろをつけていく。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 まだ昼なのに暗い。

 なんだこの暗さ?
 ここだけ夜かってくらい暗いよ?
 いや、そこまでではないか。

 だけど、ここだけ暗い。

 これだけくらいと間違って寝てしまう人も出るのではなかろうか。
 まぁ、我は眠らないけれど。

 あっ、中年の男がランプに灯りをつけた。
 そうだよね。これだけ暗いと灯りも欲しくなるよ。

 でも、あの灯りだけだとちょっと心もとない気もする。

 我は少し心配しながら後を付けていく。

 むっ、なんか大きな樹がある。
 もしかすると、あの樹にも木の実があるのかもしれない。

 木の実ハンターの我の心がうずうずしてくる。

 我はちょっとスキップをしながら、進んでいった。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 まだ昼なのに灯りをつけた村に着いた。
 あの暗雲のせいで夜のように暗いだけじゃなく、村の雰囲気自体も暗いように感じる。

 我は中年の男と子供達が家に入っていったのを見届けると、村の探索をすることにした。
 目指すはあの大きな樹。

 そして木の実を拾うのだ!
 木の実が我を呼んでいる。
 そして、もしかするとパンダもいるかもしれない。思いもかけないところで出会うからこそパンダなのだ。

 我はタッタッタと大きな樹に向かって駆け出した。
 わふー!

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 でか!
 我の思っていたよりもこの樹は大きい。
 我は樹の周りを歩いてみるも、木の実は落ちていない。

 この樹は、実をつけない樹なのだろうか。
 我のうきうきとした気分はどんどんと沈んでいく。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、がっかり状態が解消しました}

 我がぐるぐると歩いて観察していると、高い位置にある木の枝に座って暗雲を見つめている女の人を見つけた。

 あんな位置の枝に座っているなんて危ないぞ。
 いくら木登りが好きでも、あの高さから落ちたら、普通はケガをしてしまう。

 危ないから降りるように注意すべきだな。

 我は必死で身振り手振りで、危ないから降りるように伝えた。
 しかし、枝の上に座った女の人は、我に全く気がついていない。

 どうすればいいのだろうか。
 仕方あるまい。

 我も樹に登るしかない。

 登れるかな?
 ボルダリングはしたことが無いけれど、邪龍を倒したときに、穴から抜けるために何度もあがったり降りたりしたから、多分登れるはず!

 我はがしっと樹をつかみ、よじよじと登っていく。

 行ける! 行けるぞ!

 我はゆっくりと確実に女の人が座っている木の枝まで登っていった。
 木の枝の上に立つも、女の人が座っているのは枝の先の方だ。

 これ、立ったまま行けるかな?
 下手をすると落ちちゃうんじゃなかろうか。

 いや、我のバランス感覚なら行けるはず。

 うむ。

 我ならできる。

 我は木の枝の上で、一歩を踏み出す。
 二歩目で落ちた。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 地面は少しへこんだが、我の身体の穴が開くほどではない。
 ふっ、大した高さじゃないな。我のメタルボディは伊達ではない。

 はっ、我は地面に落ちたことで身体がまた汚れてしまった。
 せっかく、きれいに拭いてもらったメタルボディなのに。

 我は少しどんよりとした気持ちになる。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、憂鬱状態が解消しました}

 我は気を取り直して、再び大きな樹に登っていった。
 我は再び木の枝の上に立った。

 我は同じ過ちは繰り返さない!
 我は今度は枝に抱きついて、女の人が座っているところまでほふく前進のように進むことにした。

 まったく、我じゃなかったら、落ちた時点でケガしてるよ。
 あの女の人にも危ないって注意して降りてもらわなければ!

 しかし、我が枝の先の方を見ると、女の人の姿はなかった。

 ……。
 えっ?

 我は目をごしごしと擦り、もう一度枝の先の方を見る。

 もしかして、我は進む枝を間違えた?

 我はきょろきょろと周りを見たが、この枝に間違いはない。

 えっ?

 女の人はどこに行った!?

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}

『私の声は聞こえないでしょうけど、こんな高い枝の上で遊ぶと危ないわ』

 突然、どこかから声をかけられて、我はビクッとなる。
 そして、後ろを振り返ると女の人が枝の上に佇んでいる。

 いっ、いつのまに。我は愕然としながら女の人を見る。

『ケガをする前にはやく降りなさい』

 注意しようと思って登ってきたのに、注意されてしまった……。

『? ひょっとして、あなた私が見えてるの?』

 女の人が驚いたように問いかけてくる。

 どういうことだ?
 まるで女の人は自分の姿や声が見えないような言い方だ。
 我は首を傾げる。

 ジェスチャーで伝えようと樹の枝の上で向きを変えようとして、我は地面に落ちた。

 やはり、樹の枝の上は危ないところだ。

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