駆け抜けるゴーレム

145 団結

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 我はゴーレムなり。

 守護者(パンダ)に会うために、我は討伐隊について行くことにした。
 冒険者たちもいるという事だから、ブラックカードを出せば我も一緒に行けるかもしれない。
 だが、ブラックカードの冒険者が一緒だと、ちょっと皆が我に頼っちゃうかもしれないな。

 やはり、適度な緊張感は必要だろう。
 うむ、ここはこっそりと行くべきだ。
 我は【姿隠し】を発動させたままついていくことにしよう。

 そんな我の前を若い騎士が走っていく。
 どうやら、あちらにいる年配の騎士に用があるみたいだ。

「隊長、冒険者たちとの作戦会議がもうじき始まりますよ」
「おう、もうそんな時間か。すぐに行くぞ」

 どうやら、作戦会議があるらしい。
 ふむ、こっそりついて行くにしても、作戦を知っているほうがいいだろう。

 我は、年配の騎士についていき、作戦会議に出席する。
 【姿隠し】を発動しているので誰にも気付かれない。気付かれないからこそ我の席は用意されていない。
 しかたないので、壁際に立って作戦を聞いていることにする。

 ……。

 特に作戦らしい作戦はなかった。
 真正面から攻めるらしい。陣形と出撃の時間を確認しただけのようだ。

 なんという無策……。
 そんな作戦、我でも考えられるよ!

 我は拳を握りしめる。
 これでこの者達はパンダを助けられるのだろうか。いや、厳しい。
 パンダを助けることは、パンダを保護することはそんな簡単じゃないはずだ。
 ここは、やはり我がしっかりとパンダを保護するしかない。

 作戦会議が終わり、もうすぐ出発するようだ。
 兵士が馬車に乗り込んでいく。

 我も一緒に馬車の荷台に乗り込もうとするも、人と荷物が多くて乗り込めない。
 もうぎゅうぎゅう詰めだ。満員電車もかくあらん。

 しかたない。歩いてついていこう。
 パンダよ、どうか無事でいてくれ。

 ◇ ◆ ◇

 あ、あかん。
 これはあかんやつや。

 我は呆然としながら、目の前の惨状を見た。
 もうすぐ魔物の本拠地に辿りつくというのに。
 もう魔物の本拠地の城が見える距離に来ているというのに。

 我の目の前では、魔物の本拠地とやらに辿りつく前に兵士や騎士、冒険者達が魔物にやられている。すでに壊滅の危機だ。
 たしかにちょっと強そうな魔物もいるけれど、いたって普通の魔物だよ。

 このままでは魔物の本拠地に辿りつけないのではないだろうか。
 というか、全滅してしまうのではなかろうか。

 しかたない、ここは少し早いが助けることにしよう。
 我は【姿隠し】を解除し、姿をあらわにする。

 我の気分的にはババーンと現れたつもりだ。

 ……しかし、魔物と闘っているので誰も我に気付かない。

 ポーズを変えてみたり、魔物と兵士の間に割り込んだりしたけれど、だめだ。

 誰も「あっ、あれは」とか、「なんだ、あいつは」って気付いてくれない。
 我は肩を落とし、とぼとぼと戦場を歩く。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、がっかり状態が解消しました}

 へこたれちゃダメだ。
 だれに気付かれなくとも、我は我の行いを見ているよ。

 我は魔物達の間を駆け抜けざまにパシ、パシと叩いて、魔物を倒していく。
 我の背後には、ラインライトで光の軌跡を残す。ふふ、完璧だ。

 戦場に描かれたラインライトの軌跡が消える頃、我は魔物達をすべて倒し終わっていた。

{ログ:ゴーレムは暗黒の魔物達に平均100のダメージを与えた}
{ログ:暗黒の魔物達は息絶えた}

 我はがんばった!

 一仕事を終えたぜ、と額の汗を手の甲でぐいっとぬぐう。

「あっ、あれはなんだ」
「銀色の人形?」
「魔物達を倒してくれていたぞ」
「なんだ、あのポーチは」

 おお、皆、我に気付いてくれた!
 でも、ポーチは今、関係ないよ。
 我はそわそわしつつ、ちらりと皆の方を振り向く。

「オラ、知ってるダ。まちがいないべ!」

 ふっふっふ。
 やはり、知ってる人は我を知っているか。

「お前、何を知ってるんだよ」
「あれは銀の地蔵様だべ!」

 ? 我は首を傾げる。
 銀の地蔵? 我はゴーレムなんだけど。
 地蔵って鬼族の国に行った時に言われたことはあるけれど……、ってよく見たら、鬼族がいた。

「オラの国に死人や悪霊がはびこった時に、どこからともなく現れ、救ってくれた銀の地蔵様にまちがいないべ! こんなところで会えるとは、ありがたや! ありがたや!」

 どうやら、我に向かって手を合わせている鬼族の男は冒険者なのだろう。
 まぁ、このあたりに鬼族がいてもおかしくないのか?

 我はせっかくなので、ラインライトで後光を演出し、冒険者や兵士、騎士たちの方を振り向いた。

 我は皆を見回し、一つ頷く。
 もう魔物の本拠地は見えている。ここから先は我一人で行った方がいいと思う。

 残念だが、この者達では生命を落としてしまう可能性が高い。
 鬼族の冒険者と目が合った。我は『ここで待ってて』と思いながら頷いた。

「じ、地蔵様……そ、そんな」

 おっ、さすがは以前、我と会ったことがある鬼族の冒険者だ。
 我の言いたいことを理解してくれたらしい。

「おい、どうしたんだ?」
「あのジゾウとやらは何を言っているんだ?」

 パンと鬼族の冒険者がジゾウと言った男の頬を平手で叩いた。

「地蔵様の事を軽々しくジゾウと呼び捨てにするな!」

 ちょ、いきなり暴力はやめた方が。
 我が止める間もなく、鬼族の冒険者は続けて叫んだ。

「銀の地蔵様はな!
 こう言っておられる!」

 我の代わりに「足手まといだから来ないで」という伝えにくいことを皆に伝えてくれるらしい。
 優しい言葉で皆にわかりやすく伝えてくれるだろうか。

 我は期待しつつ鬼族の冒険者を見る。
 鬼族の冒険者と目が合った。我は任せたと頷く。

 鬼族の冒険者は全てわかっているという風に力強く頷き返してくれた。

「地蔵様はな、オラ達だけではあぶないから、一緒について行ってくれるというのだ!
 共に魔物の拠点を倒そう! その覚悟がオラ達にあるかと問うておるのだ!
 それがわからぬか!」

 ?

 あれ、おかしいな。

 我が思っているのとは全く逆の話しになってるのだけれど。
 我は首を傾げるが、鬼族の冒険者は我の様子に気付いてくれない。
 我の様子に気付かず、鬼族の冒険者はさらに言葉を続けた。

「オラ達だけでは、ここでやられていたに違いない。
 魔物達の強さに心が折れた者もおるだろう。オラももうダメだと思った」

 鬼族の冒険者の言葉に、兵士や騎士、他の冒険者が耳を傾けていく。
 そして、我の方をそっとうかがってくる。
 なんか期待した目を我に向けてくる。
 我は首を傾げるのは止めて、とりあえず堂々と立っておく。

 我はふと思い出した。
 そういえば、鬼族って結構暴走してた気がする。
 我が心配して鬼族の冒険者を見ていると、鬼族の冒険者はさらに言った。

「そのままじゃいかんと地蔵様は言ってくれておるのだ!
 地蔵様と一緒に魔物を倒して、オラの、いや、オラ達の心も救ってくださろうと言うのじゃ!
 ここまで言われたら、ここまで言われたら……。オラは地蔵様と一緒に行くべ!」
「そうか、そういうことだったのか!」
「オレは、もうやめようと思ってたけど、そうだよな。オレには他の仕事なんてできない」
「このままおめおめと負けたままでは帰れないよな」
「ああ、やってやろうぜ!」

 ?
 あれ、なんか我と一緒に皆行くことになってるみたいなのだけど。
 えっ? 来るの?
 えっ? ホントに?

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}

「地蔵様、ふがいないオラ達じゃけど、地蔵様の期待に応えてみせますから!」

 鬼族の冒険者の言葉に呼応するように、他の冒険者や兵士、騎士達もやってやろうぜという声が拡がっていく。

 ……。

 おし、やろう!
 我は皆の真ん中で頷き、両手を上げた!

 こうなったら、みんなでパンダを保護しに行こう!
 ついでに魔物もやっつけよう!

 我は(パンダ!)と心の中で叫ぶ!

 我の周りに集まっていた皆が同じように拳を振り上げて叫ぶ!

「「「「地蔵様!」」」」

 再び、我は(パンダ!)と心の中で叫びながら、両手を突き上げる。
 その様子に周りの者はますます声を張り上げて、拳を振り上げて叫ぶ!

「「「「「地蔵様!」」」」」
(パンダ!)

「「「「「「地蔵様!」」」」」」
(パンダ!)

「「「「「「「地蔵様!」」」」」」」
(パンダ!)

「「「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」」
(パンダーーーーー!)

 我らはこうして心を一つにし、魔物の本拠地の城へと乗り込むことになったのだった。

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