パンダー!

147 パンダ

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 我はゴーレムなり。

 精霊達との協力によってデカイ魔物を倒すことができた。
 この後は目前に迫ったあの城に攻め込むだけだ。
 すでに守護者としてパンダは城の中なのだろう。
 このあたりには姿が見えない。

 我が城の中に入っていこうとすると、一緒に来ていた騎士の隊長が声をかけてきた。

「地蔵様、ちょっとお待ちください」

 我はゴーレムなのだけれど、もう、地蔵でいいかと思いつつ騎士の隊長を振り返った。

「すでにこの城の前にいるだけでも、体調崩す者が出てきています。瘴気が強すぎるため、弱い者は耐えられません。この先に地蔵様と一緒に進む者を選抜するのですこしお待ちください」

 ……えっ?

 たしかにこのあたりはどんよりしている気がするけれど、瘴気が濃いのか。
 我が周りを見てみるとたしかに顔色がよくない者が多い気がする。

 ……うむ。そうか。

 我は騎士の隊長に頷き、城の中に一緒に入る者を待つことにした。

 結構時間がかかりそうだな。

 我はないわーポーチからノートとペンを取り出す。
 時間は大切に使わないといけない。パンダと会った時のために、今からノートにメッセージを書いておこう。

<名前は?>

 うむ、まずは名前を訊かないとね。<我はゴーレムなり>というページはあるから、自己紹介は問題ない。次に必要なメッセージを書こう。

<もふもふしていい?>

 うむ、これも必要。
 野生のパンダはもふもふできないけれど、この城の中にいるのは守護者のパンダだ。一言断ればもふもふさせてくれるのではなかろうか。我はパンダをもふもふできるかもしれないことに胸を膨らませていると、騎士の隊長から声をかけられた。

 どうやら、城の中に突入する選抜メンバーが決まったようだ。

 皆、真剣な面持ちだ。パンダに会える緊張感がヒシヒシと伝わってくる。

 行こう。
 パンダに会うために。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 城の中に入ってからは魔物はあまりいなかった。

 いなかったと言っても、城の外ほどいなかったというだけで、1体ずつ敵が我らの前に現れたのだ。無論、我は即座にラインライトで倒していく。

 口を開いてブレスを吐こうとする前に倒すのはなかなか難しかった。

 だって、ブレスを吐かれたら選抜メンバー達が危ないからね。
 我は気遣いもできるゴーレム。

 ちなみに選抜メンバーの中には騎士も多いので、我もラインライトを剣のようにして魔物を切り裂いていこうと思っていた。だが、せっかくの遠距離攻撃ができるラインライトを飛ばさないのはどうなのだと思い、普通にラインライトで倒しているだけだ。

 ただ、ひとつ気になることがある。

 この城の中に出てくる魔物って我は見たことがある気がするのだよね。周りの選抜メンバーは見たことがない魔物だっていっているけれど、我は絶対見たことがあると思う。

 こんな時はゴーレムメモリーだ。

 {選択:小さな人魚、女王の揺れるおっぱい、世界の地図、人魚の国からの旅立ち、ゴーレムの落下跡、イチロウとジロウとのハイタッチ、執事のパワセクハラ、飛び立つ竜王、光の女王、メイドの空回り、イチャコとバカ王子、ヤマタノオオドラゴーン、ヒカルの見せ場(倒せてない)、襲い来るモジャオ、うなだれるおっさん、悪魔と天使(オカンと娘)、キャモメとジスポの友情、ちょびひげの隠し芸、魔剣の女は泣き上戸、さらば迷宮都市、激闘! 蟲忌ン愚将軍、がんばる風の精霊達、執事のパワセクハラVer2、見送る老人と老婆、帰還する召喚者たち、やり遂げた兵士達、バニーガール!!、女王と国民、おっさんの涙、でっかいサソリ、しゃべった、世界樹!?、真っ暗、石橋、サイン中のハイエルフ、世紀末な天界、不死族が死んだ・・・・・・、治ったハク、イチロウとジロウとのハイタッチ(再)、これはタテガミなのかカツラなのか、パンダパンダパンダパンダ、やっちゃった、カラフルラインライトのどれを読み込みますか?}

 うーむ、ないな。

 我がゴーレムメモリーに記録がないということは大した敵ではなかったということか。
 多分、たいした敵ではなかったのだろう。

 まぁ、よい。先に進もう。

 今は目の前の魔物のことより、パンダの方が大切だ。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 とうとうたどり着いたのではなかろか。

 この大きな扉を開ければパンダがいるのではないかと思う。

 部屋の中からは戦闘音みたいなものが聞こえてくる。
 守護者のパンダが戦っているんだ! きっと。

 我はゴクリとつばを飲み込み扉に手をかける。
 ゴーレムだからつばは出ないけれど。

 我は扉を押した。
 だが、扉が開かない。なぜだ?

 鍵がかかっているのだろうか。

 我はさらに力を込めて押してみると、バキィという音を立てて扉が中に倒れていく。
 ずぅううーんという大きな音とともに扉が床に倒れた。

 きっと中で誰かが戦っていたら入れないようになっていたのだろう。
 ボスとの戦いでは逃げられないことはよくあることだ。そこを力尽くで開けてしまったから壊れてしまったのだ。

 そんなことよりもパンダだ。

 我は倒れた扉の上を踏みしめて、部屋の中へと駆け込んだ。

 パンダは無事か?

 部屋の中には戦いの跡が見えるが、肝心のパンダの姿がない。
 まさか、遅かったのか。

 パンダー! と、声は出ないが我はパンダを叫ぶ。

 部屋の中にいる魔物が声をかけてきた。

「今日は客が多いな。全く、配下の者どもは何をしているのか」

 我の後に続いて入ってきた選抜メンバー達が、部屋の奥にいる魔物を見て息を飲んだ。

「なっ、なんということだ」
「あれはまさか、魔界への扉か?」
「では今まで出てきた魔物は魔界の魔物?」
「そうか、だから見たことがない魔物ばかりだったのか」
「あの扉を閉めねば地上と魔界が混ざり合ってしまうぞ」

 どうやら部屋の奥にいる魔物ではなく、そのさらに後ろにある黒い紫色のモヤモヤした穴に皆、驚いているようだ。

 なんで、あれが魔界への扉だと分かるのだろうか?
 我にはよく分からないが、皆がそうだというならばそうなのだろう。

 そんなことよりもパンダはどこにいるのだ!?

 我の言葉を代弁するかのように、騎士の隊長が魔物に向かって問いかけた。

「守護者殿はどこにいるのだ!?」

 そうだ、パンダはどこにいるんだ!

 魔物は首を傾げた。

「守護者? それは先ほどまでじゃれついてきていた獣のことか?
 それならば、おまえ達の足元に転がっているではないか」

 足元?

 足元には壊れた扉があるだけだけれど?
 我は首を傾げる。扉の上から降りて扉を持ち上げてみた。

 !?

 なっ、ぱ、パンダだ!

 パンダだよお!
 パンダ! パンダ! パンダー!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}

 パンダは扉の下敷きになっていたのか!?

 くそ、なんてことだ!

 我は急いで扉をどけるとパンダの元へと駆け寄った。

 パンダは体中に傷を負っていた。

 なんてことだ、これではもふもふなんてできない。
 我はパンダを抱えて起こす。

「だ、誰だ? 早く逃げろ。あれは魔界の中でも王と呼ばれる魔物。君たちでは勝てない」

 パンダはうっすらと目を開けて、苦しそうに言葉を発した。

 パンダ。

 こんな傷だらけなのに他者を思いやるとは、まさに、パンダ!

 人々を癒し、人々の心に優しさと勇気を与えてくれる。

 これだ。これがパンダってやつなんだよ!

 我がパンダを探してここまで来たのは決して間違いではなかったのだ!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}

 パンダはゆっくりと起き上がり、魔界への扉の前にいる魔物へと近づこうとする。

「まだ立ち向かうというのか? 愚かな」

 魔物がパンダをあざ笑う。

「たとえ、勝てぬと分かっていても、この命がつきるまでミーは立ち向かう!」

 パンダは咆哮を上げながら駆けだした。

 なんという気高いパンダなのだ!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、感激状態が沈静化しました}

 パンダだけを戦わせるわけにはいかぬ!

 我もラインライトで援護せねば。

 我は魔界への扉の前に佇む魔物にラインライトを撃ち込む。
 キュィインとラインライトが魔物を消し去り、魔界への扉の中に吸い込まれていった。

{ログ:ゴーレムは暗黒魔王ダンゴンゴに1000のダメージを与えた}
{ログ:暗黒魔王ダンゴンゴは息絶えた}

 ……あれ?

 倒しちゃった。外にいた魔物の方がひょっとして強かった?

 あれ?

 我は首を傾げる。
 パンダは呆然として我の方を見てきた。

 ちょっと照れるな。
 我の体は埃っぽくないだろうか。もっと体を磨いておけばよかった。

 後ろからは選抜メンバー達が、安堵の声を上げている。

 パンダが我に近づいてきた。

「銀色の人形殿。感謝する。これであの扉をミーは閉めることができる」

 パンダが右手を差し出してきたので、我は両手でパンダの右手を包む。

 もふもふしとる! 肉球はぷにぷにだ!
 もふもふ! ぷにぷに!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}

「そろそろ手を離してもらえるだろうか」

 パンダが困ったようにつぶやいた。

 だめだ、パンダとふれあえる感激のあまり、握手した手をモフモフしてしまったようだ。
 我はパンダの手をそっと離した。

 パンダは一人で魔界への扉のへと近づいていく。
 扉を閉めると言っていたがどうするのだろうか。

「さらばだ。この魔界への扉は魔界側からでないと閉じられぬ」

 パンダはそういうと一人で魔界への扉をくぐって行った。

 な、なんてことだ。
 せっかく、せっかく会えたというのに。

 これでもうパンダとお別れしないといけないのか。

 パンダ……。

 パンダー!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}

「行ってしまわれた」

 残された選抜メンバー達は、閉じられて消えてしまった魔界への扉があった場所を、ただただ見つめるだけであった。

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