深呼吸

149 位置情報

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 ひゅー、ドスン!!

 うー、いたたた。
 ゴーレムだから痛くないけど。
 気分的に言っちゃうよ。

 我はあたりをきょろきょろと見る。

 見渡す限り、草草草木草草だ。
 大草原と言っても過言ではないのではなかろうか。
 草は我の足下くらいまでのものが多い。

 ここはどこなのだろう?
 我はあの立方体のせいでどこかに飛ばされたと思うのだが。

{ログ:位置情報<魔界北東部ジュラタン450-936-0333>}

 !!?
 何、今の!?

 位置情報ってログに出てきた。
 も、もう一回。

 ここはどこさ?

{ログ:位置情報<魔界北東部ジュラタン450-936-0333>}

 出てきた。
 位置情報。

 我にこんな隠された能力があるなんて……。

 我ってすごい。
 我ってすごいんじゃね!

 ふっふっふ。

 この位置情報さえあれば、我がどこにいるかがわかるぞ!
 わっふー!

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}

 この位置情報を元に我は動ける。
 ここはジュラタン。45……最後は3が三つ。

 いや、ちょっと待て。
 位置情報はわかっても、地図がないとどちらに進めばいいのかわからない。

 ……。

 地図情報はないのだろうか。
 位置情報があった我の事だ。
 地図情報があるかもしれない。
 我の目から、こう、プロジェクター的に地図とか映せないだろうか。

 おし、やってみよ。
 地図を表示!

{ログ:地図情報はありません}

 ……。
 なかった。

 ここはどこさ?

{ログ:位置情報<魔界北東部ジュラタン450-936-0333>}

 地図を表示?

{ログ:地図情報はありません}

 マップを表示?

{ログ:マップはありません}

 ……。

 ふー。
 我は両手を大きく上げて、胸を張った

 そのまま両手を身体の横までゆっくりと下げる。

 さて、どうしよ。

 ◇ ◆ ◇

 我はゴーレムなり。

 魔界の北東のジュラタン、なんとか333付近にいるゴーレムなり。

 位置がわかっても地図がないから、どっちに行けばいいかわからない、道に迷ったゴーレムなり。

 いや、そもそも、ここには道がない。
 草草木草くらいしかない。
 我は道に迷えてすらいないのではないだろうか。

 しいていうならば、世界に迷ったゴーレム?

 世界に迷う。
 ……ちょっとかっこいいかも。

 はっ、そうじゃない。
 問題なのは、ここは魔界らしい。

 まず、地上? というか、もといたところに帰らないと。
 どうやって帰ればいいのか。帰る方法を探そう。

 おし。

 我はないわーポーチからノートを取り出してメモを書く。

<魔界の北東ジュラタン333にて>
<地上へ戻る方法を探す>
<地図は表示できない>

 うむ。これでどこにいたのかと目的はばっちりだ。
 あとから、ゴーレム冒険記を書く時に役に立つ。
 一行目の位置情報がいかにも冒険してるって感じがする。

 我はとりあえず、少し離れた場所にあった木に登ってみた。
 ちょっとでも高い場所から、遠くを見てみる。

 我がゴーレムアイは全てを見通す!

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 木の上に登ってしばらく辺りを見ていると遠くに動くものが見えた。
 我は目の上に手をかざし、さらにじーっと見る。

 動くものは、どうやら隊列を組んでいるらしい。
 2列かな、2列だ。
 2列でざっざっざと歩いているぞ。多分。

 数は結構多い。人? うーん、違う気がする。
 なんだろう、人形? いや、あれはもしかして、ゴーレムじゃなかろうか?
 我とはかなり形状が違うけれど、あれはゴーレムな気がする。
 ゴーレムって事にしておこう。

 倒したら、ログで種族名がわかるかもしれない。
 けれど、いきなり攻撃などできるわけがない。

 なぜならば、我は平和を愛するゴーレムだから。

 ゴーレムはどうやら3種類いるようだ。
 先頭の方は黒っぽい。真ん中は茶色。後ろは灰色。

 彼らはどこに行くのだろうか。

 ……!!
 閃いた!

 そうだ、彼らの後を付いていけばどこかしらに辿りつくのではなかろうか。
 あれだけざっざっざと歩いているのだから、目的地はきっとある。

 あれでただ単に徘徊しているだけということはないだろう。

 我はするすると木を降りると、こっそりと隊列の後をつけることにした。

 ◇ ◆ ◇

 魔界の辺境。
 外周部とも呼ばれるそこには弱者が身を寄せ合う町があった。

 魔物や敵から町を守るために、町の住人達が壁をせっせと作っているが、なかなか作業が進まない。
 今日も壁を作る作業を終えた住人たちが酒場に集まり、仕事の疲れをお互いに労っていた。

「あぁ、今日も疲れたな」
「壁が完成するのはまだまだ先だな」
「しかたねぇよ。作業するヤツの数も足りないし、そもそも壁の材料である岩を持ってくるだけでも大仕事なんだ」
「わかってるよ。だが、もう少しなんとかなんねぇものか」
「なんだ、おめぇたちしらねぇのか?」
「何をだ?」
「近いうちに増員があるらしいぞ」
「本当か?」
「ああ、間違いない。なんでもゴーレム作業団を雇ったらしいぜ。休みいらずで働くらしいから、作業も大分早くなるだろうよ」
「おお、そりゃうれしいな!」
「早く来てもらいたいもんだ。なぁ」
「あぁ!」

 酒場は夜遅くまで盛り上がりをみせた。

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