ジェスチャー

150 不良品

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 我はゴーレムたちの後ろをこっそりついていく際に思った。

 あれ? ここは魔界だ。
 モンスターが当たり前。

 我はメタルゴーレム。
 いわゆるモンスターでもある。

 我がこっそりする必要はないのでは、と。

 ……。

 うむ、そうだよ。

 我がついて行ってるのはそもそもゴーレムたちだ。
 種族的には一緒。
 ファミリーではないが、フレンドといっても過言ではあるまい。

 我はこっそりとではなく堂々と後をついて行くことにした。
 【姿隠し】も発動させず、ゴーレムたちに近づいていく。

 我は、さらに歩みを早めてゴーレムたちとの距離を詰める。
 ざっざっざと規則正しく歩いて行くゴーレムたち。
 ゴーレムたちの一番後ろに並び、我も一緒にざっざっざと足並みをそろえて歩く。

 おし。気付かれていない。
 このまま一緒にゴーレムたちについていこう。

 ◇ ◆ ◇

 ざっざっざと歩いていると、たまに魔物が近づいてくる。
 我の出番か! と思っていると、先頭の方にいる黒っぽいゴーレムが魔物の方へと向かっていき、追い払った。

 ……我の出番が。

 まぁ、いっか。
 我はゴーレムたちと一緒にざっざっざと歩き続けた。

 ◇ ◆ ◇

 ふむ、やはりというべきか。
 ゴーレムだから休憩なしだ。我もゴーレムだから休憩はいらないけれど。

 昼も夜も関係なく歩き続ける。

 このゴーレムたちはどこに行くのだろう。

 我はそんなことを考えながら、ゴーレムたちの後を歩いていると、壁? のようなものが見えてきた。
 我がゴーレムアイに見破れぬものはない。
 ゴーレムアイを発動させて、壁? のようなものを凝視する。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 間違いない。
 あれは壁だ。

 ゴーレムたちはどんどんと壁の方に近づいていく。
 我もゴーレムたちの後に続いて壁の方へと近づいていく。

 この壁はどうやら作っている最中のようだ。モンスターや亜人のような者達がせっせと働き蟻の如く、石を運んで壁を作っているではないか。

 その建築途中の壁を通り過ぎると、さらに向こうに壁があった。

 ? 壁の中に壁? 何故に?

 我はゴーレムたちに続いて、壁の中にある壁へと近づいていく。
 家というか、小屋というか、建物が壁の手前に雑然と建てられているな。

 ……。
 なぜに?

 はっ!?
 もしかして、この壁の中が狭くなったから、さらに外側に壁を築こうというのではないだろうか。
 うむ、きっとそうだ。

 恐ろしい。
 我は自分が恐ろしい。

 これだけの情報で、正解に辿りついてしまうとは。
 名探偵ゴーレムは伊達ではないな。

 我は自画自賛しつつ、壁の中の壁へと辿りついた。
 どうやら、門を通って中に入るようだ。

 我も一緒に入れるだろうか。

 我が心配をしていると、ゴーレム達が隊列を変えていく。
 むむ、我はどこにいればいいのだろう。

 とりあえず、一番後ろについていよう。
 ……我の横には誰もいない。他のゴーレムたちは横にもゴーレムがいる状態で並んでいるのに。

 大丈夫だろうか? 多分、大丈夫だろう。
 中途半端にきょろきょろしたり、おどおどしたりする方がダメだ。

 我は堂々として一緒に並んでいると、槍を持った兵士のような獣人と、黒っぽいゴーレムがこちらの方に歩いてくる。

「8,9、10か、おし、申告通り10体10列で合計100体のゴーレム、ん、最後に1つ小さい銀色のがいるが、こいつもお前のところの者か?」

「ン? ナンノコトダ? 我ラハ100体ダガ……」

 まずい。我のことがばれた。

 我は兵士の獣人と黒っぽいゴーレムの方を向く。
 とりあえず、頷いておく。

「オマエハ何者ダ?」

 何者かと問われれば、答えなくてはなるまい。
 我はないわーポーチからノートを取り出して、<我はゴーレムなり>と書いているページを見せる。

 兵士の獣人が、ないわーポーチを見て、表情をないわーって感じに変える。
 黒っぽいゴーレムは表情を変えない。ゴーレムだからだろうな。

 我がそんなことを考えていると、兵士の獣人と黒っぽいゴーレムが我が見せているノートを覗き込んだ。

「魔界の文字じゃないな。地上の文字か?」
「ウム、地上ノ文字ダロウ。タダ情報ガナイノデ何ト書イテイルノカワカラナイ」

 なんと!?
 魔界では文字が違うのか!?
 我はどうやってコミュニケーションを取ればいいんだ!?
 我の卓越したジェスチャーの出番か!!?

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}

 我はノートをないわーポーチにしまうと、我はゴーレムなりとジェスチャーで伝える。

「わたわたしているが、あんたにはわかるか?」

 兵士の獣人が黒っぽいゴーレムに尋ねる。
 我の必死のジェスチャーがわたわた……。

 我は期待を込めて黒っぽいゴーレムを見つめる。

「サッパリワカラナイ」

 全く伝わってない。

 我はがっくりと肩を落とす。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、がっかり状態が解消しました}

「どうする? こいつもあんたのところの一員として、作業員に加えるのか?
 それとも関係ないから、町から追い出しておけばいいのか?」

 黒っぽいゴーレムが我の方を見てくる。
 黒っぽいゴーレムの目がチカチカ光り始めた。

 ?

 なんだろう?
 何かを受信しているのか?
 もしくは再起動でもしているのか?

 我が首を傾げながら黒っぽいゴーレムを見続ける。

 黒っぽいゴーレムの目が元に戻り、腕を組んだ。

「フゥム。我ラゴーレムハ目カラノ信号デ意思ノ疎通ヲハカルコトモデキル。
 ダガ、コノ小サイノニハデキナイヨウダ」

 !?
 なんと、それではさきほど目がチカチカしていたのは、我に何かを伝えようとしていたのか!?

 ゴーレムにある機能であれば、我にもそんな機能があるのだろうか?

 我も目をチカチカさせてみよう。
 我はゴーレムなりと伝われと想いながら、目をチカチカさせてみる。
 目をチカチカできているだろうか? 自分では見られぬからわからない。

「オソラクダガ」

 おっ、黒っぽいゴーレムが反応したぞ!
 どうやら伝わったらしい。さすがは我。

「コノ小サイノハ機能不全。ツマリハ不良品ナノダロウ」

 我は唖然として黒っぽいゴーレムを見る。
 ゴーレムだから表情は変わらないけれど。

「シャベルコトモデキズ、目デノ通信モデキズ、身体ノ大キサモ小サイ。不良品ダカラ捨テラレタ可能性ガ高イ」

 ふ、不良品って。

 我は別に魔界で迷ってはいるけれど、捨てられた訳ではない。
 我は不良品じゃないぞという意思を込めて、目をチカチカさせてみる。

 黒っぽいゴーレムは我を見ていない。
 我は諦めずにジェスチャーでも、不良品じゃないと抗議する。

 必死にジェスチャーで伝えようとする我を無視して、兵士の獣人と黒っぽいゴーレムの間で話しは進んで行く。

「じゃあ、こいつはあんたのところの一員として数えなくていいんだな?」

「イヤ、コノ小サイノモ我ラノ一員トシテ加エル。トテモ一体デハ生キテイケヌダロウカラナ」

「わかった。じゃあ、あんたらは全部で101体だな。それじゃあ、町の中に入って、作業について聞いてくれ」

「アア、ワカッタ。皆、門ノ中ヘ入レ」

 兵士の獣人が門を開けると、ゴーレムたちは門の中へと入っていく。
 黒っぽいゴーレムが我に語りかけてくる。

「小サイノ。オ前モ我ラノ一員トシテ働イテモラウコトニナルカラナ」

 我もここぞとばかり、不良品じゃないとジェスチャーで抗議する。
 黒っぽいゴーレムは我を見て頷く。

「ソウカ。ソレホド嬉シイカ。ソレデハ小サイノモ我ラト一緒ニ中ニ入ロウ」

 我の抗議は伝わらず、黒っぽいゴーレムは門の中へと入っていく。

 我は、むむっと両手を握りしめ、歯ぎしりをする。
 歯はないけど。

 ゴーレムたちがどんどん中へと進んで行く。
 とりあえず、ついていくため、我もゴーレムたちの後を追った。

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