怖くない怖くない

152 来襲

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 我はゴーレムなり。

 真面目にコツコツと働いているゴーレムなり。

 壁作りももう終盤が近づいてきたのではなかろうか。

 我も石を切ったり、判子を押したりとがんばったからな。
 努力の形が目に見えるのは素晴らしい。

 うんうんと我は頷きながら完成が間近な壁を見やった。

 ◇ ◆ ◇

 最近は、隙を見てサボ……。

 いや、違う違う。サボってない。
 最近は、仕事の合間にちょいちょいと情報収集に励んでいたのだ。

 忘れないように、その都度、ないわーポーチからノートと鉛筆を取り出してメモしていた。
 我は建物の近くにあった樽の上に座る。

 ちょっと振り返ってみよう。我はないわーポーチからノートを取り出した。
 ノートの端に描いたパラパラマンガを2回ほど流して見てから、ノートをしっかりと開いた。

 我がゴーレムイヤーとゴーレムアイを駆使して、情報を収集したところ、このあたりは魔界の辺境らしい。

{ログ:ゴーレムイヤーというスキルはありません}
{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 このあたりの土地は貧しい。
 もう古い西部劇で出てきそうな荒野っぽい風景が拡がっている。

 しかし、この町に住む者達は貧しいながらも、畑で作物を育てたり、動物を狩ったりして、協力しながら生きている。そこは魔界も地上とそんなに変わらないみたいだ。

 この壁も我が最初に看破したとおり、最初に作った壁の中が狭くなったから、さらに外側に壁を築いている。たしかに我が判子を押していても、外から町に入ってくる者は多かったからね。

 あれだけ受け入れていたら、壁の中に住むところがなくなるのも当然だ。

 我が樽の上に座ってノートを見ていると、壁の方からカンカンカンと鐘の音が聞こえてくる。

 なんだ?
 こんな鐘の音はこの町に来てから聞いたことがない。

 我はノートをしまい、鐘の音が鳴り響く壁の方へと走り出した。

 ◇ ◆ ◇

 我はタッタッタと、壁に向かって駆けていく。
 我の他にも多くの者が壁の方へと向かっている。

 負けてはおれぬ。

 我はラインライトで我の走った後に光の軌跡を描きながら壁へと急いだ。

 ◇ ◆ ◇

 壁に辿りついた。

 む?

 門が閉まっている。外側の壁は完成が間近だが、まだ完成していないから門は開いたままのことが多いのに。

 なぜだ?

 我は壁をよじ登った。
 壁の上から外を見ると遠くに砂埃が舞っているのが見えた。

 ?

 我はゴーレムアイを発動し、目をこらした。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 むむ、あれはオーク?
 オークの大群がこちらに向かっているのか?

 オークがこちらに攻めて来ているから、この鐘が鳴らされているのか!

 我はラインライトを発動させて撃ち出すべきかと思ったが、ここは魔界。モンスターがいるのが当たり前。オークが大群、いや、大勢で向かってきているからといって、敵であるとは限らない。

 うむ。危ないところだった。早とちりは禁物だ。

 敵かどうかわからないなら、近くまで行き、確認すれば良いだけだ。

 我は壁から飛び降りるとこちらに向かっている大勢のオークの方へと向かうことにした。

 ◇ ◆ ◇

 我は荒野を駆ける。大勢のオークに向かって。

 近づくにつれオーク達の姿がはっきりとわかってきた。
 やはり、このオーク達は攻めて来ている訳ではないようだ。

 こちらに向かってきているのは、ケガをしている大人のオークを先頭に、年老いたオークや、幼いオークなど戦えるようなオークではない。

 ラインライトを撃たなくて良かった。

 先頭のケガをしているオークが我を見ている。
 我もオークを見る。我らは見つめ合う形となった。

「俺たちは、」

 何かを言いかけたオークをの言葉を手で遮り、ついてくるようにジェスチャーで伝える。我に事情を伝えられても、その事情をジェスチャーで町の者に伝えるのは至難の業なのだ。だから、事情を話してもらっても困る。

 とりあえず町まで案内しておけばいいだろう。
 町に入るための手続きとかは知らないけどね。

 オークたちの中には荷車を引いている者もいるな。
 こんなガタガタの荒野を荷車を引いて歩くのは大変だ。
 リヤカーを引いていた我は路面のコンディションにいつも注意を払っていたからよくわかる。

 町に案内するついでにラインライトで地面をなめらかな道にしながらいこう。

 我はラインライトをころころと転がしながら、きれいな道を作りつつ町に向かって歩き出す。

 しばらく歩いて後ろを振り返るとオーク達がついて来ていない。
 我はオーク達に向かってクイクイと手でついてくるように伝える。

 ようやくオーク達が動き出した。

 ◇ ◆ ◇

 町に着いたら、オーク達を門番や町の者に任せる。
 我の役目もここまでだな。うんうんと一人で頷いているとオーク達や町の者の視線が我に集まっていることに気付いた。

 これは、感謝の視線?

 ふふふ、いや、いいってことよ。
 当たり前の事をしただけさ。

 我は気にするなというジェスチャーをしつつ、町の中へと入っていこうとする。

 するとオーク達や回りの者達がざわめきだした。
 なんだ?

 我と別れるのが寂しいのはわかるが……。

 いや、なんか違う。

 ちょっとみんなが壁の中に入れてとちょっとパニックになっているような。

 何が起こっている!?

 我はいそいそと壁によじ登った。

 壁の上からオーク達の後ろの方を見ると山が見える。

 山?

 あんなところに山はなかった。
 なんだろう。

 うーんと考えていると、山がちょっと大きくなった気がする。
 もしかして、山が近づいてきていないだろうか。

 我はゴーレムアイでじっと観察する。

{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}

 うむ、間違いない。山が近づいてきている。
 あの山が近づいてきているからオーク達がパニックになっているようだ。

 ラインライトで消しても良いけれど、とりあえず現地で確認してからどうするか決めよう。

 我は壁の上からとぅ!とジャンプして、地面に降りることにした。
 あっ、オークさんや、そんなところにいたら。

 ゴンと大きなオークとぶつかった。
 悪いねとポンポンとオークの肩を叩いて謝ってから我は山の方に駆けだした。

 ◇ ◆ ◇

 山だけど、山じゃなかった。
 すごく大きな魔物だ。多分。

 象。
 うむ、象に近いと思う。外見は。
 ただ、めっちゃデカイ。

 我は象に近づいた。が、象は我に気付いていない。

 ちょ、足に踏まれそう。

 我は足を華麗に回避して距離をとる。

 どうしよう。とりあえず、ラインライトで檻のように囲ってみるかな。

 我は巨大なラインライトで象を囲む。
 象が驚いたようにその場で立ち上がり、長い鼻でラインライトをなぎ払おうとした。

 あぁ!?

 我の心配通りに、象の長い鼻がラインライトでスパパと輪切りになっていくよ。

 むっ、象の鼻が切れたところから元通りになっていく。再生しているようだ。

 よかった。
 象なのに、鼻がないってことにならなくて良かった。

 象はしばらく暴れた後、大人しくなった。
 我はラインライトの間から中に入り、象に近づく。

 象が我に気付いた。
 おし、ここは怯えさせないように優しく行かねば。

 我は両方の手の平を見せるようにして、怖くないよとアピールしながら象に近づく。

 象が長い鼻で我をなぎ払おうとしてくる。
 長い鼻をぺしっとたたき落とし、我はさらに怖くないよとアピールしながら近づく。

 長い鼻が何度も我を襲ってくるが、我はその全ての鼻をぺしぺしとたたき落とす。

 やはり、野生の動物、いや、魔物とは心の交流ができぬのか。

 ただ我は諦めぬモノ。
 諦めたりはしないぞ!

 我は諦めず象に近づく。
 象が後ずさりだした!

 これはチャンスか!

 我は逃がすまいとジリジリと近づく。
 心なしか象が怯えている気がする。

 ……ラインライトの檻を解除したら逃げるだろうか?
 よく考えれば、別に捕獲する必要もないし。

 我は試しに町とは反対側のラインライトを解除してみた。

 後ろのラインライトがなくなった象は、さらに後退し、しばらく我を見た後、反転して逃げていった。

 野生の動物は捕獲したらダメだったからね。
 多分、野生の魔物も捕獲しないほうがいいはず。

 我は残りのラインライトも解除した。
 あたりに散らばった大きな象の鼻の肉の輪切りを見る。

 これって食べられるのだろうか?
 我はゴーレムだから食べられないけれど。

 町に来た大勢のオークの食料にならないかな。

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