勝利・友情・努力

162 ゴーレム再生工場

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<我はゴーレムなり>

 我はないわーポーチからノートを取り出して、勇者と聖女と賢者(女)と賢者(男)に見せた。

 勇者達は牢屋の真ん中で正座をしつつ我のノートを見て呟いた。

「ゴーレム……」
「銀色のゴーレム……」

 勇者達が我をじろじろと見てくる。

「変なポーチを身につけたゴーレム」
「小さくて銀色。冒険者ギルドの禁則事項と一致してる」

 冒険者ギルドの禁則事項?
 もしかして我が持っている冒険者のブラックカードを見たいのだろうか?

 まぁ、我のブラックカードは珍しいからな。
 
 我はないわーポーチからブラックカードを取りだす。
 ちら、ちらっとブラックカードを勇者達にチラ見せする。

「あ、あれはブラックカード」
「本当に?」

 ふふふ、我のブラックカードに勇者達が驚いている。
 我はどーんと水戸黄門の角さんが印籠を見せるようにブラックカードを見せつけた。

 我はブラックカードを見せつけつつドヤ顔をする。

「なぜ魔界にいるんだ?」

 なぜと言われれば答えようではないか。
 我には隠すべき事など何もないからな。
 我はノートに魔界に来た理由を書いて行くことにした。

<話せば、いや、書けば長くなる>
<それでも聞きたいか? そうか、聞きたいか>
<我はゴーレムアイを身につけるために国を出た>

 我は続きを書く。

 赤い髪に金色の瞳の女が勇者達に話しかけた。

「ねぇ、ギンゴちゃんがなんて書いているか、読んで教えてよ。
 地上の文字は知らないんだ」

 聖女がそれに頷くと我がノートに書いた内容を読み上げる。
 それを聞いた赤い髪に金色の瞳の女は首を傾げた。

「聞きたいか? って、誰も反応してなかったよね。
 まぁ、いいか。続きを書いているようだし」

<そして、パンダを探した>
<パンダはパンダだけあって、簡単には見つからなかった>

 我は今までの旅を思い出しながら、ノートに書き続ける。

<知っているか? パンダは自分の事をミーって呼ぶ>
<そして、パンダはパンダから黒クマに変わった>
<何を言われているかわからないって顔をしているな>
<だが、事実だ>
<パンダは黒クマになってしまったんだ>
<我も認めたくはなかった>
<パンダが黒クマになるなんて>
<黒かったら、それはもうたんなるクマだ>
<そのパンダ、いや、黒クマ、いや、クマを追いかけて我は魔界に来た>

 勇者達は顔を見合わせた。
 赤い髪に金色の瞳の女がぽつりと言う。

「ギンゴちゃん、残念なくらい説明が下手だね。
 そもそもパンダってなんなんだい?」

 なっ!?
 たしかにパンダについて説明をしていなかった。
 これでは、説明が下手と言われても仕方ない。

 だが、魔界でもパンダは知られていないのか!?
 我はいそいそとノートにパンダの説明を書き始めたら、我の手をガッと掴まれた。

「いや、ごめん、忘れて。
 説明してくれなくていいよ」

 赤い髪に金色の瞳の女が首を左右に振りながら、我がノートに書く手を止めた。
 
「それで、ギンゴちゃんはこれからどうするのさ」

 あっ、そうだ。
 大切なのは過去ではなく、これからどうするかだ。
 ゴーレム再生工場で勇者達を鍛えなければ。

<我は大魔王に地上に戻る方法を聞きに行く>
<勇者達も大魔王の元に向かうようだが、今のままでは死ぬだけだ>
<だから、我は勇者達を大魔王と戦えるように鍛える!>
<執事とメイドよ、我がしっかりと勇者達の性根もたたき直すから安心して欲しい>

 我はキンと力強く胸を叩いた。

「「「「え」」」」
 と、勇者達が声をそろえて、我の方を見つめてくる。

 うむ、ゴーレム再生工場はしっかりと取り組まねばなるまい。
 我は気を引き締めた。

 ◇ ◆ ◇

 まずは基礎体力。
 何をするにも基礎体力。

 現状を把握するためにも勇者達と我は塔から出て塔の回りをとりあえず走ってみた。

 3周ほどで、賢者(女)が脱落。
 5周ほどで、賢者(男)と聖女が脱落。
 9周ほどで、勇者が脱落。

 脱落した者は、走っていなかった小さくなれる大きな象が回収してくれた。

 うーむ、だれも10周に到達できぬとは。
 基礎体力からつけねばならぬな。

 ◇ ◆ ◇

 次は勇者と賢者(男・女)に我に向かって攻撃魔法を撃ってみてもらった。
 聖女は自身の魔力を分け与えることができるそうなので、勇者達に魔力を分け与えてもらうことにした。

「ほ、本当にいいのか? 全力で行くぞ」
「どうなっても知らないからね」
「反撃しないでくださいよ」

 雷や炎、風が我に向かって飛んでくる。
 我は勇者達の魔法を受けながら考える。

 ダメだ。

 この程度では多分、大魔王にまったく効かないだろう。
 魔法の衝撃が来るとわかっていれば、勇者達の魔法は我の行動を妨げるほどではない。

 ほら、ラジオ体操だってできる。

 我がラジオ体操第2をし終わる頃には、勇者達はその場に手をついていた。

「魔力が尽きた」
「なんで、なんで、私の最高の魔法が」
「……まったく効いていないのか」

 うむ、魔法も鍛えねば。

 ◇ ◆ ◇

 次は物理攻撃がどうなのかを試してみたかったのだが。

「ああああああああ、お、オレの聖剣が!!?」

 我は半分に折れた聖剣の先を拾った。
 そして、勇者が持っている折れた聖剣を見る。

 ……折れちゃった。

 我は折れた聖剣の先を、勇者が持っている折れた聖剣に会わせて復元をしてみる。

 お、おし。くっついた。復元できた。

「な、直ったのか?」
 勇者が震える声つぶやき、聖剣を見つめる。

 む、でも勇者の手が震えていたからちょっとずれてしまった。
 
 ずれているのは良くないよね。
 我はもう一度ずれたところで聖剣を折る。

「ああああああああああ、またオレの聖剣を!??」

 そして、もう一度聖剣を復元した。
 おし、今度はうまくいった。

 ◇ ◆ ◇

 我は勇者達の実力の現状把握をした後、勇者達の特訓を開始した。

 ついにゴーレム再生工場が稼働し始める時が来た。

 我はついでに小さくなれる大きな象も勇者達と一緒に鍛える。

 小さくなれる大きな象は、我の特訓を受けてどんどん実力をつけている。
 今まで以上に山のように大きくなれるようになり、今まで以上に小さくなれるようになった。

 我の手に乗った小さくなれる大きな象を見て思ったものだ。

 ゴーレム再生工場、すごくね? って。

 しかし、ゴーレム再生工場でも、勇者達の実力がイマイチ伸びない。

 我はどうすればいいのだろうか。

 ◇ ◆ ◇

 成長するには何が必要か。

 我は考えた。

 勝利・友情・努力。

 努力はした。しかし、伸びない。

 勝利も今までしたことはあるだろう。
 ただ、それが良い勝利だったのか?
 そこに友情はあったのか?

 勝利と友情はどうすればいい?

 !!?

 そうか!

 そうだ!

 ◇ ◆ ◇

 我は執事に頼んで、そこそこ若くて有望な悪魔の兵士を4名連れてきてもらった。
 
「ゴーレム様、言われたとおり、4名を連れてまいりました」

 我は執事にありがとうの意味を込めて頷いた。
 兵士達の構成も勇者達に合わせて、戦士系、魔法系、魔法系、僧侶系という構成にしてもらった。

 そう、勇者達に必要なのはライバルだ。
 赤い髪に金色の瞳の女は強すぎる。
 小さくなれる大きな象も、象だからライバルにはなれない。

 勇者達に必要なのは切磋琢磨して成長できるライバルが必要なはずだ。

 これに気付いた我は自分を褒めてあげたい。

 我は勇者達と共に悪魔の兵士達も鍛え始めた。
 悪魔の兵士達は勇者達に負けたことがあるらしいが、我の提案を聞いて自分から志願してくれた者達だ。
 きっと悪魔の兵士達は勇者達のライバルになることができるだろう。

 ◇ ◆ ◇

 悪魔の兵士達も徐々に力をつけてきた。
 まだまだ勇者達には及ばないが、このまま鍛えていこう。

 今の時点で勇者達は悪魔の兵士達を侮っている。
 まったく、もう!

 ◇ ◆ ◇

 うむ、ウサギとカメの童話を思い出すな。

 勇者達はウサギ、悪魔の兵士達はカメ。

 このままでいけば、悪魔の兵士達は勇者達に追いつけよう。

 ◇ ◆ ◇

 執事が特訓の様子を見に来て、赤い髪に金色の瞳の女に質問をしていた。

「悪魔の兵士達が強くなりすぎていませんか?」

「あー、そうだね。成長著しいね」

「なぜでしょう?」

「ギンゴちゃんが真面目に鍛えていて、悪魔の兵士達はギンゴちゃんを信じて真面目に鍛えられているからじゃないかな」

「……それであれほど強くなるのでしょうか?」

「なるんじゃない? 事実なっているし。
 もうすぐ四天王に追いつきそうだね」

 ◇ ◆ ◇

 ふっふっふ。

 勇者達と悪魔の兵士達の模擬戦で、ついに悪魔の兵士達が勇者達を破った!

 これで勇者達も悪魔の兵士達をライバルとして認めるだろう。

 ◇ ◆ ◇

 勇者達が落ち込んでいる。

 俗に言う壁に当たったという状態だろうか。

 発破をかけねば。

 そして、悪魔の兵士達も勇者達を倒せたことで満足したように見える。
 だが、こんなところで満足してもらってはダメだ。

 我は鬼となる!
 我はゴーレムだけれど。
 特訓の鬼となる。

 鬼軍曹ゴーレムだ!

 ◇ ◆ ◇

 我は勇者達と悪魔の兵士達に厳しい訓練を課した。
 ライバルができた勇者達と悪魔の兵士達に次に必要なのは越えることができない高い壁だ。

 我は心を鬼にして徹底的に勇者達と悪魔の兵士達を鍛え上げる。
 彼らの前に立ちはだかる壁に我自身がなる。

 ◇ ◆ ◇

 まだまだ。

 もっとできる!

 限界はもっと先だ。

 ◇ ◆ ◇

 限界は自分が決めるものじゃない。

 限界を超えたところに新たな世界が開けるんだ!

 ◇ ◆ ◇

 むむ、限界はあるのだろうか。
 いや、しかし、我は今鬼軍曹……。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}

 そうだ、甘い顔はダメだ。
 やりきろう。

 それが今の我がすべきこと。

 ◇ ◆ ◇

   
 まずい。

 やりすぎてしまったかもしれない。

 彼らの目がどんよりしてきた。

 ◇ ◆ ◇

 だ、大丈夫かな。

 大丈夫だよね。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}

 うむ、きっと大丈夫。

 ◇ ◆ ◇

 やはり、ダメかもしれない。

 ◇ ◆ ◇

 これは、一周回って良くなったのではなかろうか。

 とうとう勇者達と悪魔の兵士達に一体感が生まれた。

 共に厳しい特訓をしてきて仲間意識が芽生えたようだ。
 素晴らしい。

 ◇ ◆ ◇

 勇者達と悪魔の兵士達が協力して我に挑んできた。
 
 諦めなかったら何とかなる。
 うむうむ、素晴らしい!
 素晴らしいぞ!

 これが我が思い描いて勝利・友情・努力の姿だ。

 だが、こんなところが満足してもらっては困る。

 たたきのめした。

 ◇ ◆ ◇

 勇者達と悪魔の兵士達に加えて赤い髪に金色の瞳の女も一緒に我に挑んできた。

 うむ。
 実戦に勝る修行はない。

 前より厳しくたたきのめした。

 ◇ ◆ ◇

 なんということだろう。
 勇者達と悪魔の兵士達が修行はもういいと言い出した。

 もう十分強くなったと言ってきた。

 我は腕を組んで、勇者達と悪魔の兵士達を見つめる。

 我には決めていることがある。
 自己申告の技量や実力など信じてはダメだ。
 自分の目で見て考えないといけない。
 勇者達と悪魔の兵士達はまだ強くない。

 彼らが強くなったと思うかどうかは重要ではない。

 我が、彼らが強くなったと思うかどうかが重要なのだ。

 我は首を横に振って訓練を再開した。

 ◇ ◆ ◇

 悪魔の兵士達に他の兵士も一緒に鍛えてくださいと懇願された。

 悪魔の兵士達から願い出てくるなんて。
 悪魔の兵士達も日々成長している。

「もうオレ達だけこんな厳しいのはイヤだ」
「他のヤツも巻き込んでやる」

 我は悪魔の兵士達の願いを聞き入れて、勇者達と悪魔の兵士達、赤い髪に金色の瞳の女、そして他の悪魔の兵士達をまとめて相手にすることにした。
 
 一致団結して我に立ち向かってくる。
 我はその姿に感激する。

{ログ:【悟りしモノ】の効果により、感激状態が解消しました}

 とりあえず、たたきのめした。

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