鳴り響く鐘の音

ぬすっと物語0 鳴り響く鐘の音

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 その日も、神殿内には多くの人々がいた。

 その神殿は、聖なる獣の卵を祀った神殿である。
 いつか聖なる獣が誕生すると、大切に大切に、何十年、何百年と聖なる獣の卵が引き継がれてきた。

 神殿の中央に祀られた聖なる獣の卵。

 人々が近づきすぎないように卵から一定の距離に柵が作られている。人々は柵の外側から卵に向かってお金を投げ込む。いつの頃から始まったのかは不明だが、聖なる獣が早く生まれてくるようにとの願いが込められてお金が投げこまれるようになった。

 人々のざわめきと、投げられるお金のチャリンチャリンという音が響く中、突如、キン、キンと一際大きな金属をぶつけたような、鐘のような音が神殿内に鳴り響いた。

 神殿内は、一瞬のうちに静まりかえった。

 この神殿には鐘などはない。何が起こったのかわからず、人々は口をつぐんだ。聖なる獣が生まれる前触れかと思う者もいたが、しばらくの間、何の変化もなかったため、徐々に、徐々に、人々のざわめきやお金が投げ込まれる音が大きくなった。

 翌日、神殿の中央に祀られた聖なる獣の卵が銀色に輝いていた。
 卵の突然の変化に、ついに聖なる獣が生まれるのかと人々の期待は膨らんでいった。

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