お裾分け

ぬすっと物語25 お裾分け

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 おいらは雰囲気がどんよりしている場所に来た。
 ここの人たちはいつも元気がない。
 今のおいらと同じだ。

 おいらは窓際にある箱の上によじ登る。

 皆、ベッドに寝ている。
 おいらはリンゴを食べるとほんわかした気分になれる。
 おなかの袋から2つリンゴをとりだし、箱の上に一つ置く。
 お裾分けだ。

 もう一つは、おいらが食べる。
 かぷり、しゃりしゃり。
 おいしい。リンゴは美味しい!

 お金の回収はできなかったから、ちょっとがっかりしてたけど、リンゴを食べたら、ちょっと元気になってきた。

 ここのみんなもお裾分けしたリンゴでちょっと元気になったらいいね。

 おいらは箱の上に置いたリンゴをなでる。
 おいしくなーれ。これを食べて皆がちょっと元気になったらいい。

 うんうん。

 おいらはおなかの袋からペンを取り出して、箱に<みんなでたべてください(ぬすっと)>と書いた。
 これで皆もリンゴを食べるはず。

 おいらは、満足して、窓から外に飛び出した。
 ごろんと回転しながら着地する。
 窓は高くなかったから痛くはない。

 おいらはころころと転がる。地面に仰向けに寝そべり空を見た。

 今日の空は、雲が所々に浮かんでいる。
 青い空に浮かんだ雲が静かに流れていった。

 おいらも雲にあわせて、目を動かす。
 おなかもいっぱいでおいらは眠くなってきた。
 低い樹の下に移動して、すやぁっと寝た。

 ◇ ◆ ◇

 ぱちっと目を開く。

 ふわぁっと大きく口をあけてあくびをする。
 目を両手でごしごしとこすり、むむーっと背伸びをした。

 よく寝た。

 おいらはよっと立ち上がる。
 ちょっと気分転換にいつも行かない場所に行ってみよう。

 ◇ ◆ ◇

 ふらふらと厨房の近くまで来た。
 おいらはおなかが空いているのかもしれない。

 ん、あっちの方から声が聞こえてくる。
 なんだろう、あれは。

 !!?

 リ、リンゴがいっぱいある。
 リンゴだけじゃない、野菜とかもある。
 あの荷車? みたいなものから箱が下ろされている。

 おいらはおそるおそる下ろされた箱に近づいた。
 箱によじのぼって、中身を見てみる。

 ふわぁ、やっぱり、リンゴだ。

 おいらは箱にへばりついたまま、荷車から箱を降ろしている男を見る。

 ムキッとした褐色の肌の男だ。
 頭に布を巻いている。

 リンゴや野菜はあのムキッとした男がここに持って来ているのか。

 ……。
 あのムキッとした男の後を付ければ、リンゴや野菜を手に入れられるのではなかろうか。

 おいらは箱から降りて、箱の影から男を見る。

 行くべきか。
 行かざるべきか。

 うーん、うーん。
 おいらはどうするか迷う。

 箱を降ろし終わったのか、ムキッとした男が荷車を引いて歩き出した。

 うー、うー!

 おいらは、追いかけるべきか追いかけないべきか迷う。

 ……。

 この一歩を踏み出して、男を追いかければ、リンゴを手に入れられるかもしれない。

 …………。

 おいらは、おいらは。

 ………………。

 やめとこ。

 今は、この箱からリンゴをもらえばいいや。

 おいらは、ペンを取り出して、箱にメッセージを書く。

「りんごを3こもらいます。ぎんのおかねを1つおいておきます。ぬすっと」

 うん。これでよし。

 おいらは箱によじ登り、リンゴを3つおなかの袋に入れた。
 銀色のお金を一枚取りだして置く。

 あっ、箱の中のリンゴの隙間に落ちていった。

 手を伸ばしてみても届かない。

 これじゃ、銀色のお金に気付いてもらえない。
 どうしよう。

 おいらはリンゴの上でむーっと手を伸ばしてみるけれど、届かない。

 むっ。

 この箱にも人が近づいてきてる!

 おいらは慌てて、箱から飛び降りる。
 おなかの袋からもう一枚銀色のお金を取り出して、箱の側に置く。

 おいらは急いでその場をあとにした。

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